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熱量は自分で生み出さなくてもいい。無理せず、心地よく働く|私の天職、見つけました。Vol.12 奥田壽穂さん(World Matcha株式会社マーケティングオペレーション)

自分の仕事に対して、自信をもって”天職”だと言い切れる人はなかなかいません。 でも誰もがきっと、天職だと誇れる仕事ができたらと憧れの気持ちを抱いているのではないでしょうか。

『私の天職、見つけました。』は、「天職に就いている」と胸を張って自分らしく活躍する人にインタビューを行い、「天職とは何たるか」を探る連載企画です。

今回は、アメリカ発の家庭用抹茶マシン「CUZEN MATCHA(空禅抹茶)」を展開するWorld Matcha株式会社で、マーケティングオペレーションとして活躍する奥田壽穂(おくだ しほ)さんにお話を伺いました。

World Matcha株式会社提供

飲料メーカーサントリーのブランドマネージャーという華やかなキャリアの中で感じていた熱量のギャップを昇華し、辿り着いた奥田さん流の「天職」の定義とは。

奥田 壽穂(おくだ しほ)
World Matcha株式会社 マーケティングオペレーション

大学卒業後、サントリーに入社し、ブランドマネージャーとして販売戦略やプロモーションを担当。約8年間勤務した後、中国への移住・出産・育児により約10年間のブランクを経て、現職へ。現在はCUZEN MATCHAのマーケティングおよび商品に関わるオペレーション全般を担い、原料調達から顧客体験までを横断的に支える。

周囲との「熱量のギャップ」に悩んだサントリー時代

ーー奥田さんは前職時代、サントリーでブランドマネージャーをされていたんですよね。

はい、大学のゼミで、マーケティングやブランドに関することを学んでいたので、自然とメーカーに興味を持ちました。

その中でも、自分が普段から接しているような親しみのある商品に携わりたくて、日用品や食品、飲料を取り扱う会社を中心に見ていたんです。最終的にご縁をいただいたのがサントリーで、食品事業部の飲料部門で働いていました。

ーーどんなお仕事をされていたんですか?

ブランドマネージャーとして、既存商品の販売戦略やプロモーションを一貫して担当していました。例えば、「C.Cレモン」。

ビタミンCが手軽に摂れて、美味しい。炭酸なのに優しい味でもあって、幅広い世代に受け入れられる。

そのような出来上がっているブランドの世界観を崩さずに、新しい表現を考えていくのが私の仕事でした。

ーー誰もが知っているような身近な商品に携わられていたんですね。やりたい仕事ができて、やりがいもあったのではないでしょうか?

やりがいはありましたし、会社や商品のことも好きだったんですけど、周りとの熱量のギャップを感じていました。他の人より、商品愛が弱い気がしていて。

ーー熱量が高くなかった。

高くないというか、一歩引いてしまうような感じだったのかなと思います。サントリーは商品愛がものすごく強い人が多くて、会議でも「この商品をこうしていきたい!」とキラキラした目で熱く語る人ばかりでした。

ブランドマネージャーは船頭になり、誰よりも強い想いを持って周囲を引っ張っていかなければならない立場です。仕事として頭で考えて回すことはできても、心がついてこなかった。

無理やり情熱を絞り出すことが苦しかったんです。だから、こんな自分がブランドマネージャーでいいのかなと葛藤していました。

振り返ってみると、幼少期のころから自分の内側に自然と熱が湧くようなものに出会っていなかったかもしれません。

World Matcha株式会社提供

のめり込めるものがなかった幼少期

ーー幼少期のころからそういう気質があったんですね。

5歳上の姉がいるのですが、彼女は私が生まれる前からクラシックバレエをずっと続けていて。現在も講師を務めているような、いわゆるひとつの道を極めている人なんです。

一方で私は、母が「姉妹で同じ世界にいるのは心配」と考えたこともあり、バレエには触れずに育てられました。その代わり小学校受験のために、体操教室やスイミング、ピアノといろいろなことを経験させてもらったんです。

ーー幅広い経験をされていた。

結局、受験には失敗して小学校は公立に通ったんですけど、卒業後は中学受験をして中高一貫の女子校に通い出しました。そのときも、特定の何かに熱中することはありませんでした。

勉強もほどほどでしたし、部活動もいわゆる帰宅部だったんです。でも、体育祭や文化祭、球技大会などの学校行事には積極的に取り組んでいました。

学級委員のリーダーのようなポジションを務めていたこともあったと思います。

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ーー大学を決める際にも、「この学問を学びたい」という思いはなかったのでしょうか?

そうですね。実は、医師に憧れていたこともあったんです。

幼いころに通っていた近所の小児科の先生がとても優しい方で、自分もこの人みたいになりたいと思っていました。

ただ医学部にいけるほど勉強にのめり込むこともなく、結局諦めてしまって。理系学部の他のものには全く興味が湧かず、文転までしたんです。

かといって、文系学部の中にもこれといって学びたい学問はありませんでした。

予備校の先生から「これまで理系で数学の点数は他の文系の子たちよりもいいから、数学が活かせる経済学部はどう?」と勧められ、「じゃあ、それで」と安易に決めてしまいました。

大学でマーケティングやブランドを学んでいたのも、「一番分かりやすくて面白そう」という直感で選んだだけで、強い関心があったわけではなかったんです。

自分で強く何かを選び取るというよりも、与えられた環境の中で楽しむタイプだったのかもしれません。

10年間のブランクを経て再就職

ーー約8年間働いた後、サントリーを退職されています。周りとの熱量のギャップが理由だったのでしょうか?

いい会社だなと思っていたので、熱量のギャップは感じつつも、辞めるまでには至りませんでした。ただ、上海に住んでいるパートナーと結婚して、中国へ移住することになったので、退職することにしたんです。

中国に渡ってからは、1年間語学学校に通って、その後は第一子、第二子を出産し、育児に専念していました。そして移住後、約5年経ったタイミングで、パートナーの仕事の関係で日本に帰国することになりました。

ーー帰国してからもしばらくは育児に専念していらっしゃたんですか?

5年くらいは、働いていませんでしたね。当時はまだリモートワークがそれほど普及していなかったので、会社勤めとなると、子どもたちから離れるしかありませんでした。

でも、そこまでして働きたくなかったんです。上の子が小学校に入学して、下の子が幼稚園に入園したくらいのとき、徐々に自分の時間も持てるようになってきて、仕事復帰しようかなと考え始めました。

ーー約10年間のブランクがあったわけですよね。転職活動に難しさを覚えたことも多かったのではないでしょうか?

そうですね。希望の条件に合う転職先をなかなか見つけられませんでした。

子どもたちが家に帰ってきたときに家にいなかったり、長期休みのときに一緒に過ごせなかったりするのが嫌で、短時間で働けるアルバイトを探していたこともありましたね。

電話オペレーターやスーパーの店員、給食スタッフなどの募集を見かけたんですけど、その仕事は自分には合わなさそうで。前職の経験を活かせそうなマーケティング職で探したこともありましたが、週5日勤務の求人がほとんどでした。

そんなときに、大学のゼミの先輩で、サントリー時代の同僚でもあったWorld Matchaの代表取締役の塚田英次郎さんから声をかけてもらったんです。

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ーーもともとのお知り合いだったんですね。

学年が被っていたわけではないので、大学時代は面識がなかったですし、サントリーでも同じチームで働いていたわけではないんですけどね。卒業後に大学のゼミの先生とご飯を食べに行くときにご一緒したり、飲みに行ったりすることは度々ありました。

声をかけていただいたのは、CUZEN MATCHAを日本で展開しようとしていたころ。販売戦略やプロモーションを経験したことがある人を探していたみたいなんです。

「フルタイムじゃなくていいし、フルリモートでいいし、手伝ってくれない?」と言われて、条件もマッチするなと。

ーーそれで入社を決められたわけですね。

もうひとつ入社を決めた大きな理由があって。

具体的な条件を聞くためにオフィスを訪れたときに、Japan Country Manager(日本支社の最高責任者)で、英次郎さんのパートナーである志乃さんとお話をさせてもらいました。

そこで初めてCUZEN MATCHAの抹茶を飲ませてもらったんです。それまで抹茶はそんなに好きではなかったんですけど、ものすごく美味しくて。

CUZEN MATCHAなら自信を持って広げていけるかもしれないと思えたんです。

「おいしいお茶」を追求している英次郎さんと、それを応援する志乃さんのお二人の人柄にも惹かれましたし、この人たちを応援したいなと思って、入社を決めました。

推し活する人を推し活する

ーー現在は「マーケティングオペレーション」という役割を担っていますが、具体的にどのようなお仕事をされているのですか?

抹茶マシンや抹茶リーフといった商品に関わる全般の業務を担当しています。たとえば、抹茶リーフであれば原料である茶葉の調達から加工、発送、お客様の声を商品に反映するまでの全工程に関わっています。

サントリーでは、原料調達や工場とのやり取り、販売はそれぞれ別の部署が担当していました。でも現在は、原料が生まれてからお客様に届くまでの全工程に携われる。

その全体像を俯瞰できるダイナミックさにワクワクしますし、貴重な経験をさせてもらえているなと充実感を抱いています。

ーーいろいろなことに携われるのは、奥田さんに合っているのかもと思いました。他にもやりがいを感じていることはありますか?

直接関わっている業務ではないですけど、年に数回行う展示会で、お客様と接点を持てたときはやりがいを感じますね。

展示会に来てくださったお客様が目をキラキラさせながら「いい香り」「美味しい」と言ってくれる姿を見ると、本当にいい商品に関われているんだなと思えて、嬉しくなります。

ーーサントリー時代に感じていた周りとの「熱量のギャップ」はありませんか?

CUZEN MATCHAをもっと広めていきたいという思いはもちろん持っているんですけど、やっぱり情熱にあふれる他のメンバーと比べると、私の熱量はそこまで高くないなと思うんです。

だけど、前職時代とは違って、みんなを引っ張っていくようなポジションではないので、苦しさは感じないですかね。

いまは英次郎さんや志乃さんという強烈な情熱を持つ船頭がいます。私はその船にちょこんと乗っかって、彼らがいかにスムーズに進めるかを全力でサポートすればいい。

それが自分にはちょうどいいんですよね。

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ーー「自分が先頭に立たなくていい」という環境の変化が大きかった。

そうですね。私は、自分の内側から熱い思いを発するのが苦手なタイプ。

0から1を生み出すエネルギーは高くなくて、生みの苦しみに耐えられないんです。でも、熱い思いを持った人たちをサポートすることは全然苦には感じないんです。

誰かが愛情を持って生み出したものを大切に育て、広げていくことなら、どんな苦労もいとわずに頑張れる。

ーー誰かをサポートすることに対しては、熱い思いがあるように思いました。

そうかもしれないですね。いま娘がK-POPにハマっていて推し活をしているんですけど、娘の推し活を推し活しているような感じです。

いかに娘の推し活がスムーズにできるかサポートしていて、それがとても楽しい。

ーー推し活する人を推し活。面白い!

誰かが燃やす情熱には賛同できるというか、その人を支えることが私の情熱にもつながるのかもしれません。だからいま、働いていて無理がないというか、心地よく前向きな状態でいられるんですよね。

そんな状態でいられることが、天職なのかもしれないと思っています。

心地よさを軸に仕事を選ぶ

ーー無理なく、心地よくいられる状態が天職。

天職と言われると、強い思いを持って、ひとつの道を極めるみたいなイメージを持つ人が多いかもしれません。やっぱりそういう人がフィーチャーされがちですし、そうならないとダメなんじゃないかと劣等感を抱いてしまうこともあると思います。

でも、強い使命感を持てるものに出会える人は、限られた人。私を含め、そこまで熱量を注げるものに出会えない人はいっぱいいるはずです。

だから、毎日無理なく、心地よく働けていたらそれで十分ハッピーだし、天職と言ってもいいんじゃないかなと思います。

ーーとても軽やかに働かれている様子が伝わってきます。

私はあまり悩まないんですよね。子どもたちからは、「周りの子が将来やりたいことや就きたい職業を見つけていて、自分が同じように見つけられるか不安」と相談されることもあって。

「いつか見つかるかもしれないし、見つからないかもしれないし、見つけられなくてもいい」と答えているんです。

見つからなくても、無理なく心地よい状態で働ける場所が見つかるかもしれないから、不安にならなくてもいい。自分自身がそうだったので、余計にそう思うんです。

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ーーいまのお仕事がジャストフィットされているようにも感じます。

そうですね。本当にジャストフィットしている感じで、もちろん大変なこともありますけど、ストレスを抱えることはほとんどないです。

仕事内容も、働き方も、組織の文化も、一緒に働く人たちも自分にとってちょうどいい。特に、スタートアップならではのフレキシビリティやスピード感は自分に合っているなと思います。

例えば、フルリモートで働く場所もさまざまなので、社内でコミュニケーションを活性化させるために、去年から「Chama-time」という取り組みが始まりました。ランダムに選ばれた3から4名のメンバーが雑談する時間で、そういう新しい取り組みも必要だなと思ったら、「やってみよう!」とすぐスタートできる環境なんです。

そういう環境だからこそ、自分を大きく見せることなく、等身大のまま働けているなと思います。

ーー奥田さんのように自分に合う環境を見つけるにはどうすればいいのでしょう?

心地よさのようなものを軸に仕事を選んでみてもいいのかなと思います。

「自分の情熱が燃やせる仕事はなんだろう」「自分の得意が活かせる仕事はなんだろう」みたいに考えることも大切ですが、「自分が無理せずに働けるのはどんな仕事だろう」と考えてみる。

その上で、細かい条件とかを見て検討してみるといいかもしれません。

やりたいこと、なりたい姿などが思い浮かばない人は、まず自分が自然体でいられる環境を見つけて無理せずに働いてみてほしいです。

そうすれば、いつか振り返ったときに、これが自分の天職なんだと思える日が来るのかもしれません。

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天職と聞くと、どうしても情熱を燃やせるものを見つけなくてはと考えてしまうことが多いと思います。今回の奥田さんのお話を聞いて、「たとえ情熱を燃やせるものが見つからなくてもいいんだ」と肩の力がふっと抜けた気がしています。

「やりたいものが見つからない」「自分にとっての天職がわからない」という人は、まず周りにいる応援したいと思える人を探してみてはいかがでしょうか?

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ソラミドmadoは、自然体な生き方を考えるメディア。「自然体で、生きよう。」をコンセプトに、さまざまな人の考えを発信しています。各種SNSでも情報を発信中。みなさんと一緒に、自然体を考えられたら嬉しいです。

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取材・執筆

佐藤純平
ソラミドmado編集部

ああでもない、こうでもないと悩みがちなライター。ライフコーチとしても活動中。猫背を直したい。
Twitter: https://twitter.com/junpeissu

編集

笹沼杏佳
ソラミドmado編集部

大学在学中より雑誌制作やメディア運営、ブランドPRなどを手がける企業で勤務したのち、2017年からフリーランスとして活動。ウェブや雑誌、書籍、企業オウンドメディアなどでジャンルを問わず執筆。2020年から株式会社スカイベイビーズ(ソラミドmadoの運営元)に所属。2023年には出産し一児の母に。お酒が好き。

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