編集部のメンバーが自然体に近づくための行動を実践し、気づきを発信する連載企画『自然体探求室』。今回実践してみたのは、ジュリア キャメロンの著書『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』の中に出てくる、アーティスト・デートです。

実践した人

ああでもない、こうでもないと悩みがちなライター。ライフコーチとしても活動中。猫背を直したい。
Twitter: https://twitter.com/junpeissu

フォトグラファー / ディレクター。東京と岩手を拠点にフリーランスで活動。1996年生まれ、神奈川県出身。旅・暮らし・人物撮影を得意分野とする。2022年よりスカイベイビーズに参加。
https://asamiiizuka.com/
創造的な心を育む「アーティスト・デート」とは
アーティスト・デートとは何か。『ずっとやりたかったことを、やりなさい。』には、以下のように記述されています。
アーティスト・デートとは、あなた自身の創造的な心(それを本書では、内なるアーティストと呼ぶ)を育むために特別に確保される、週二時間ほどの時間のかたまりである。
自分なりの解釈をすれば、子どものころのように、自分自身の声に素直に従って、本当にやりたかったことを、やってみるということ。ただし、誰かと一緒にやるのではなく、一人で行うことが重要なんだということも記されています。
「アーティスト・デートをやってみたい」と提案してくれたのは、ソラミドmado編集部員の飯塚さん。その背景には、ある課題感があったのだそう。

日々過ごしている中で、無意識的に手の届きやすい受動的な快楽を追い求めてしまっているなと感じていたんです。美味しいものを食べるとか、YouTubeで面白い動画を観るとか、もちろんそれも悪くはないんですけど、「こればっかりでいいんだっけ?」というモヤモヤもあって。
だから、少し手を伸ばさないと届かないような、やりたかったことで、まだできていないことをやる機会を意識的に作りたかった。アーティスト・デートのことを知ったときは、「これだ!!」と思いました。
その話を聞きながら、ぼく(佐藤)は首を大きく縦に振っていました。ぼく自身も、そんな享楽的なところがあり、同じような課題感があったからです。「ぼくもやりたいです!」。そんな風に手を挙げて、飯塚さんとぼくの二人が各々アーティスト・デートを実践してみることにしました。
どこへ行くか、何をするかよりも、自分との対話が大切
飯塚さんが実践したのは、「写真の撮り歩き」「図書館でデザインが面白い本探し」「庭園のある博物館へ行くこと」の3つ。ぼくが実践したのは、「ハイキング」「夏至詣」「お祭りを見に行くこと」の3つです。

飯塚さんはフォトグラファーで、仕事でも写真を撮っていますよね。それなのに、なんで写真の撮り歩きをしようと思ったんですか?

当時は、取材などの事前に目的意識を持った撮影が多くて、心の赴くままに撮るということができていなかったんです。


なるほど。心の赴くままに撮影してみてどうでしたか?

自由気ままに撮れて良かったんですけど、「写真を撮り歩く」という行為自体が普段とほぼ同じで、新しい気づきがありませんでした。だから、もう少しいつもとは違うことをやりたいなという思いが出てきましたね。

あぁ、やりたいことの中でも、いつもとはちょっと違うことをやるのは大事かも。ぼくは家で過ごすことが多かったから、とにかく外に出ようとはしていましたね。特に、ハイキングはめちゃくちゃ良かったです。自然の中に身を置くと、音に敏感になるんですよね。木で周りがあんまり見えないからこそ、ガサガサって虫や動物が動く音だったり、途中雨に降られたんですけど、ザァザァと葉に雨が当たる音がいつもより大きく聞こえたり。いかに自分がいつも人工的な音に囲まれて生きているのかに気づかされました。


いいですね。私は図書館に行ったときのことがすごく印象に残っています。普段は、写真集や旅行系のコーナーに行くことが多かったから、タイトルを見ないで単純にデザインが面白い本を探そうと決めました。それで惹かれたのは、辞書と歴史書。装丁がものすごくカッコ良かったんですよね。それに紙の辞書に触ったのも久しぶりで、重厚感があって、触っていて「紙の本っていいな」と思いました。

つい興味のあるコーナーばかりに行ってしまいますもんね。

行ったことのある図書館ではあったんですけど、いつもとは違う視点を持ってみると、面白いものが見つかるんだなと思いました。


アーティスト・デートは、そういう行ったことがある場所でもいいのかもしれませんね。

大事なのは、どこに行って何をするかよりも、その時々の自分と対話して、気づきを得られるかが大切ですよね。だから、一人で行うというポイントも納得できます。

そうですね。一人だからこそ、自分の内側に宿る感覚がある。そこに気づくことが、新しい自分の発見というか、感性を開くことになるというか、そんな気がしました。

だから、アーティスト・デート中はSNSに投稿しない、見ないことが大事だなって思いました。ノイズがあると、自分だけの時間がもったいないので。

間違いないですね。
やりたいことは、やらないと忘れていくもの
アーティスト・デートを実践してみて、二人とも「後悔はなかった」という感想を抱きました。ただ、最初のころはなかなか実践できずにいました。

やろうと決めてからしばらくの間、「まだやれていないっす」と言った記憶があります。

やりたいことなんだけど、めんどくさいなとか、今日じゃなくてもいいかなとか、そういう気持ちがありましたよね。

そう、先延ばしにしちゃっていた。忙しいしな、疲れているしなと言い訳して、やらないみたいなことが続いてしまいました。

「あらかじめ予定に入れておく」ことは、めちゃくちゃ大事ですよね。私は予定日を決めたらちゃんとやれたので。ただ決めるまでに時間がかかった。

ぼくは予定に入れておいても、「やっぱり今日じゃなくても」という声が自分の中に浮かんできたので、「安易にキャンセルしない」ということも決めておきました。半ば強制みたいにしたら、実践できました。


やりたいことなんだけど、やるしかない状況に追い込む。なんか矛盾もしているような……笑

めっちゃ矛盾していたと思います。でも、そうしないとやらなかった気がする。やりたいことのはずなのに、優先順位が上がらずに先延ばしにしちゃう。これって、めっちゃ不思議じゃないですか?

そうですね。私は誰かとの約束じゃなくて、自分との約束だから、守らなくてもいいかなとなっているのかも。そういう意味で、自分を大切にできていないんだなということには気づけたかもしれません。

たしかに、自分との約束を破り続けちゃうのって、なんか自分を大切にしていない感じもしますもんね。

固い表現かもしれないですけど、アーティスト・デートは自分を大切にするための訓練でもあるなと思います。

うん、そうかもしれない。ぼくは、やりたいことをやった先のネガティブな未来ばかり想像していたなと気づくことができました。「ハイキングなんかしたら筋肉痛になって、月曜日からの仕事に響くかもしれない」「神社にお参りしたって何も変わらないから時間の無駄」。そんなネガティブな想像をして、やめておこうと断念していました。


お金がない、時間がないという言い訳もしがちですよね。アーティスト・デートは頭で考えて行うというよりも、感覚を信じてみるという方が近いかも。

あぁ、そうですね。直感に従うというか、好奇心に従うというか。日常ではつい「これをする目的ってなんだろう」って考えちゃうから、無目的にやることがいいのかも。あと、アーティスト・デートをやっていると、やりたいことがどんどん出てくるんですよね。「パフェ食べに行きたいな」「映画観に行きたいな」みたいな。やりたいことってやらずにいると忘れてしまうんだなと思いました。

本当にそう。やりたいことを抑えつけていると、やりたいことがわからなくなっていくんでしょうね。そういう意味でも、アーティスト・デートのような時間ってすごく大切だなと思いました。
ソラミドmadoの企画として取り組んでみたアーティスト・デート。飯塚さんとぼくの二人で「これで終わりにしたくないよね」という話もしていました。
3回だけ実践して終わりではなく、少しずつでも習慣化していって、自分と対話する、自分を大切にする時間を日常の中に設けられたらと思います。
「やりたいことあるし、やってみようかな」
少しでもそのように感じられたら、ぜひ取り組んでみてください。素敵な自分とのデートを楽しんでくださいね。
私たちが実践したアーティスト・デートのやり方
- やりたいことを挙げてみる
- 些細なことでもOK
- 日常的にはやらないことを選ぶ
- いつもとは違う視点を持ってみる
- 予定を決める
- 2週に1度、1時間〜2時間ぐらい確保
- 誰にも邪魔されない時間にする
- キャンセルはなるべくしない
- 実践
- 人の目を気にしない
- 自分の心に従う
- SNSをなるべく見ない、投稿しない
- 振り返り
- やってみてどうだったか日記やメモを書く
ソラミドmadoについて

ソラミドmadoは、自然体な生き方を考えるメディア。「自然体で、生きよう。」をコンセプトに、さまざまな人の暮らし・考え方を発信しています。Twitterでも最新情報をお届け。みなさんと一緒に、自然体を考えられたら嬉しいです。https://twitter.com/soramido_media