CATEGORY
POWERED BY
SKYBABIES
SKYBABIES

居心地の悪さを生きてみよう。共創型アクションデザインファームLaereと見据える“異なり”のその先

“異なり”は、悪いことだと思っていました。

チーム内で意見が割れたとき、どちらかが正しくて、どちらかが間違っている。その違いは、埋めるべきものなのだと。

けれど、この考え方は息苦しいことにも気付きました。違いは悪いこと。そうすると、自分の意見を持つことが怖くなってしまう。そして、想いを押し殺して生きてしまう。

その先に、心地良さは待っていない。でも、“異なり”をどう乗り越えたらいいのか分からない……。

そう悩んでいたときに目にしたのが、

「バラバラの想い」を引き出し、「重なる想い」へ。

ということばでした。それは、共創型アクションデザインファームLaere Inc.が掲げるスローガン。Laereは北欧社会をヒントにしながら、さまざまな人や企業に対して人材育成や組織開発のプログラムを提供しています。

彼ら、彼女らは、“異なり”のその先を見据えているかもしれない。そう感じ、異なる人と共にウェルビーイングに生きるためのヒントを、共同代表の大本綾さん・坂本由紀恵さんのおふたりにお伺いしました。

バラバラな個人を重ね合わせる。そんな可能性を探ってみましょう。

ひとりを疎かにしていては、共同体にならない

―― 一人ひとりのウェルビーイングが語られることは多くなってきたと思うんですが、それを組織のなかで共存させる文脈は少ないと感じているんです。各々の心地良さは違うはず。それを同時に満たすってところに、なかなか視点が向けられていないなって。

大本綾さん(以下、大本):そうですね。個人の幸せや働きやすさへの注目は増しているものの、チームや組織の視点で考える機会は少ないかもしれません。

だからこそ、私たちも“wellbeing stories journey”というプログラムを提供しているんです。チームや組織のなかで、いかに個人のウェルビーイングを共存させるかを考えるプログラムですね。

弊社と関連の深いデンマークなど欧州のインスピレーションをもとに、個人とチームのウェルビーイングを理解し、実践していくための支援を行なっています。

大本綾(おおもと・あや)さん
株式会社Laere共同代表・Creative Process Director
高校、大学でカナダとアメリカに留学。外資系広告会社に勤務後、デンマークのビジネスデザインスクール、KAOSPILOTに初の日本人留学生として受け入れられ、2015年6月に卒業。KAOSPILOTの留学経験から、クリエイティブは才能ではなく、トレーニングによって得ることができるスキルであると確信。企業や教育機関を始め様々な組織に対してクリエイティブな人材育成と組織開発プログラムの開発・実施し好評を得ている。ベルリン日独センター主催「第15回日独ヤングリーダーズフォーラム」日本側代表メンバーに2020年に選出。

―― そこでは、どういった考え方が必要になるのでしょうか?

坂本由紀恵さん(以下、坂本):チームのウェルビーイングを考えるにも、まずは一人が出発点になる、と意識することが大切ですね。

―― 一人から始まる?

坂本:どんなチームであっても、一人ひとりが幸せじゃないとチームでの幸せを探求することができないんです。チームや組織は、一人が集まってできるもの。全体を見る前に、個人を疎かにしたらいけないんだと思います。

チームって漠然としたグループではないんですよね。必ず、誰かが中心にいて、その周りに人がいる。その組織観を持つことは、大切かもしれませんね。

大本:そうですね。一人ひとりの内省なくして、チームのウェルビーイングを達成することはできません。まずは、個人レベルで「私の幸せってなんだろう」や「私の心地良さってなんだろう」を考える。その先で自律した個人となって、初めてチームという共同体の視点を持つことができるんです。

―― なるほど、まずは自身のことを考えることが大切なんですね。

坂本:個人を疎かにする例として、「メンバーに幸せに働いて欲しい」っていう経営者や人事の人が幸せそうじゃない、ってことがあります。

人って敏感だから、「そう言っているあなたはどうなんですか?」って思っちゃう。もちろん自分以外の幸せを考えることも大切ですが、まずは自身の幸せを達成させないと。薄っぺらなものになっちゃいますよね。

坂本由紀恵(さかもと・ゆきえ)さん
株式会社Laere共同代表・Creative Project Director
韓国と英国への留学経験があり、JICAにて研修監理、及び国際交流のコーディネーターを15年間務め、日本全国の教育機関を廻る機会を得た。結婚と同時にデンマーク人の夫ともに英会話スクールを立ち上げ、教材開発にも携わる。その後、人材育成を核とした地域活性化の在り方を研究するため、事業構想大学院大学にて事業構想修士を取得。日本とデンマークに暮らす二人の子供の母でもあり、職業を通した学びだけではなく、子育ての経験も活かし、最高に楽しい学びの機会と空間を提供することが人々や組織を成長させると信じている。

―― たしかに、疲弊している人から「幸せに働いて欲しい」と言われても、受け止められないですもんね……。

大本:だからこそ、ウェルビーイングを語るのならば「自分はどうなんだろう?」って問いかけることが重要になるんです。まずは、自分への問いかけ。そこからしか始まらないと思います。

My Willが人生の豊かさにつながる

―― どんなウェルビーイングも、一人ひとりから始まる。けれど、個人の幸せを考えるのも簡単ではない、と思っているんです。想いを大切に日々を過ごすのは、なかなか難しいですよね……。

坂本:そうですね、日本の就活システムだとライスワークとして仕事を始めることが多くなってしまいますし。自分が成し遂げたいこととは関係のないところに、仕事が存在している。それだと、ウェルビーイングに過ごすことは難しいですよね。

大本:どんな活動をするにも、自分の想いは大切になります。だから、私たちは“My Wish”と“My Will”を分けて考えるようにしているんです。

―― My WishとMy Will、ですか?

大本:My Wishは個人的な願望のこと、大きな家に住みたいとか、美味しいものを食べたいとか。「欲望」に近いかもしれないですね。

それに対して、My Willは社会的な側面をもっていて、こんな未来を作りたいとか、他者とこのように繋がりたい、というような「志」や「意思」を指します。

このMy Willをことばにしておくことが、ウェルビーイングに生きるために大切なことなんです。

坂本:My Willは、与えられた一回きりの人生をどう生きていくかを問うこと、だとも言えます。人間は、人と人との関わり合いのなかで生きるもの。その関わり方の意志を握っておくことは、人生の指針になりますね。

―― My Will、そんな大それたものを持っている人は少ない気がするんですが……?

坂本:My Willの規模は関係ないんです。ある人では町内会での関わり合いを指すし、ある人では国際貢献での関わり合いを指す。

大本:大小関係なく、自分の原体験に紐付いたものであることが大切ですね。

―― 原体験は、誰にでもあるものなんでしょうか?

大本:誰にだって、いままで感情が動いたことはありますよね。すごく辛かったり嬉しかったり。その感情にどのような意味を見出すかによって、原体験になるかどうかが決まるんです。

坂本:誰しも自分の純粋な気持ちで動いていた時期があるはずなんですよね。それは、幼稚園の頃かもしれないし、小学生の頃かもしれない。一番ウェルビーイングに過ごせていた時期を思い返して、じゃあ今をどう生きたいかを考える。

その先で見つけたMy Willを握っておくことが、人生の豊かさに繋がるはずです。My Willに従って生きている人は、パワーが違いますからね。

想いは、生煮えでいい。

―― どう他者や社会と繋がりたいかのMy Will、か。僕も探してみようと思います。

大本:まずは内省することも大切ですが、My Willに従って生きるには他者の存在も重要になるんですよ。

―― どういうことでしょうか?

大本:どんな想いであっても、一人きりでは実現できることは限られています。だからこそ、他者と対話して、それぞれの想いを語ってみる。そこで「想いが通い合った」経験を積み重ねる。

そうして初めて、自分の想いが確信に変わり、人々を巻き込めるようなMy Willへと発展していくんです。

坂本:だから、自己開示も必要なんですよね。私はどのような想いを持って活動しているのか、それを他者と共有できる形にすることが大切になります。

―― 想いを他者に共有する、ですか。正直、苦手な人が多そうな気がします。そんなに自信がないというか、確固たるものじゃないと話しちゃいけないというか。

坂本:そんな感覚はありますよね。生煮えの段階でシェアするのは、なんだか恥ずかしいって。それは、正解を話さないといけない、って思っているからかもしれません。

―― あぁ、それはありますね……。形になりきる前に他人に話すことは避けるべきだって、思っているかも。

坂本:完璧になってから世に出そうとする人が多いんですけど、もっと前の段階で出していいんです。不完全な状態で場に出してみて、いろんな人に問うてみた方がいい。そのプロセスでしか見つからない発見もありますし。

―― まずはことばにしてみたら、それを話すことで気付くこともありそうですもんね。

大本:失敗していいんですよ。失敗して、そこから学べばいい。失敗は学びのギフトになりますし、その経験を共有すれば他者の学びにもなる。失敗は、新たな発見ですから。

坂本:少しずつ失敗するのが大切なのかもしれませんね。いきなり完成品を出すのではなく、小出しにして小さい失敗を繰り返す。

粘土のクラフティングみたいなイメージですよ。ああでもないこうでもないと、少しずつ形を変えていって完成を目指す。いきなり確固たるMy Willを見つけようとしないことが大切かもしれませんね。

抽象度を上げれば、競争から共創に変わる

―― いまお伺いしたMy Willがはっきりすればするほど、メンバーのウェルビーイングを同時に満たすことが難しい気がするんです。全員の目指す方向が違うなかで、どのようにMy Willを共存させたらよいのでしょうか?

大本:たしかに自身の想いだけを声高に叫んでいては、チーム状況がカオスになってしまいますよね。どちらが正しいかで争ってしまう。

そこで大切なのは、自身の想いの先にある大きな展望なんです。

―― 自身の想いの先?

大本:どんなMy Willであっても、その先には「あって欲しい社会」や「あって欲しい人間観」などがあるはず。その想いは、自分を超えたところにあると言ってもいい。その大きなものを共有するんです。

坂本:視座を上げるって言い方もできるし、抽象度を上げるって言い方もできますね。個別具体的だと、それぞれの想いはぶつかり合ってしまう。けれど、全てを包含する抽象的な想いを共有すれば、同じ方向を向けるようになる。

大本:抽象度を上げると、誰もが自分なりに自由に意味づけできるから、誰もが正解になるんですよ。間違いがなくなるので、それぞれの競争から、共創に移ることが可能になる。大きな未来を描いて、それを共に握ることが大切なんだと思います。

―― 自分を超えた大きな未来……。たしかに、そのレベルまで抽象度を引き上げると、想いを共有することができそうです。
坂本:どうやったら、バラバラな想いを重ね合わせることができるか。各々の違いを昇華させる道筋を探すことが、ウェルビーイングの共存には不可欠なんでしょうね。

―― どうしても「違い=悪」って思ってしまいますけど、そうじゃないですもんね。

大本:自分の意見はひとつの意見に過ぎない。でも、その意見たちを合わせることで、さらにより良い未来を描くことができる。そんな考えを持つことで、ただ権利を主張するのではなく、協力的なチームになるんです。

一人ひとりがリーダーシップを持て

―― 異なるMy Willを、ひとつの大きな想いに昇華させる。その道を模索すること自体が大事になりそうですね。違いを悪としない、チームビルディングの大切さを感じました。

坂本:そうですね。チームの共通認識をどのように形作るかは、強く意識すると良いかもしれません。

―― リーダーの責任も大きくなりますね……。

大本:たしかにリーダーの責任は大きいですけど、全てを背負っているわけではないんですよ。

坂本:「一人のリーダーがチーム全員のウェルビーイングを支える」って考え自体に、無理がありますしね。

―― リーダーが支えるわけではない?

大本:リーダーも、一人の人間ですから。彼・彼女もいろんな課題を抱えていて、個人的な生活がある。リーダーに全てを任せるのではなく、全員がリーダーであるって感覚を持つことが大切なんです。

―― 全員がリーダー、ですか。

大本:「私だったら、チームのこういう部分を支えられる」とか「僕だったら、こんなことをリードできる」とか。各々のメンバーが、チームのために自分は何ができるのかを考えること。その意識の先で、パワフルなチームに繋がるんです。

坂本:その意識のためにも、リーダーが全部できるわけじゃないってことを、リーダー自身が自己開示することが重要ですね。

大本:そうですね。自身の弱みをメンバーに語る。

坂本:その自己開示は、リーダーだけがやっても意味はなくて。リーダーを含む全メンバーが自己開示する。そうすれば、この人はこれが得意で、あの人はあれが苦手で、って相互理解に繋がりますよね。相互理解は、信頼を生む。

メンバーそれぞれの強み弱みを共有するんです。強いチームはそれができていますね。

―― なるほど、一人ひとりの凸凹を理解しないと、組み合わせることはできない……。

大本:それぞれの強み弱みを共有し合えば、みんながみんなを支え合うことが可能になります。誰かがチームからこぼれ落ちそうになったとき、リーダーだけに任せるのではなく、何人もの人が「この部分なら私が力になれる」と救いの手を差し伸べる。

そんなセーフティネットが強固なチームは強いですよ。そのメンバーは自分の意志で生きられる。そのためにも、一人ひとりがリーダーシップを持つことが大切なんです。

居心地の悪いグレーゾーンを生きる

―― 自分の意志を持っていて良いんだ、っていう安心感は大切ですよね。どうやって安心感を作り上げるかも、重要な観点な気がします。

大本:そのためにも、分かり合えなくてもいい、っていう意識は大切ですね。

―― 分かり合うことが大切なんじゃないですか……?

大本:人は異なる生き物ですから、完全に分かり合うことは難しいと思うんです。でも、「分かり合うこと」だけを善としてしまうと、自分と違う意見に出会ったときに、それを否定するしかなくなるじゃないですか。

それだと、自分の意志を持っていていい、という安心感は生まれませんよね。

―― あぁ、たしかに……。分かり合うがゴールに据えられていると、どんな意見でも持っていていい、とは思えないですね。

坂本:分かり合えないって、居心地が悪いことだとは思うんです。その居心地の悪い状態を、どのように保持していくかって視点が大切なんですよね。

大本:簡単に実践できるのは、ミーティング前のチェックインとチェックアウトです。ミーティング前に、今日の気分や想いを言語化して場に共有する。その時間があるだけで、自分の存在が認められている実感を得られるんです。

どんなにフワっとしていたり、モヤッとしていても、自分たちの発する声を聞き合う。それがあるだけで、安心感に繋がると思います。

坂本:どんな感情でも受け止めてもらえる場所があるってことは、強いセーフティネットになり得るんですよね。

―― ちょっとした工夫だけで、安心感に繋がるんですね。

大本:あとは、簡単に分かろうとしない姿勢も持つといいかもしれません。

―― 分かり合えない居心地の悪さに耐える、ってことですか。

坂本:人って、どうしても白と黒を分けたがると思うんです。だって、その方が楽ですから。「あなたはこうで、私はこうです」ってきっぱり線を引いちゃった方が、衝突も生まれないですし。

でも、日々を生きているとグレーゾーンの方が多くないですか?

大本:白と黒の“間”には、無数の色が存在しています。なのに、白と黒に二分してしまうと見えなくなってしまう。それって、異なる人どうしが一緒にいるときも同じだと思うんです。

私とあなた。二分して考えると、分かり合える部分も分かり合えないし、違いを悪とみなしてしまう。そうじゃなくて、二人の“間”にあるいろんな可能性に想像を巡らせてみる。その先で、分かり合えないまま一緒にいることができるはずです。

坂本:“間”って居心地が悪い。けれど、異なる他者と生きていくには、必ず必要なものなんです。分かりやすさから離れて、グレーゾーンに身を置いてみる。それだけで、見える世界は少しだけ変わると思いますよ。

―― 異なる他者と一緒に生きていく。そのためのヒントをお伺いできた気がします。貴重なお話、ありがとうございました!

人と人は、決して分かり合えない

そう考えるのは、悲観的なことだと思っていました。人は、分かり合わないといけないのだと。

けれど、大本さん・坂本さんへの取材を通して、分かり合えないことは“可能性”になるのだと思うようになりました。

分かり合えない意見や人との出会い。それは、新しい考えとの出会いを指しているのではないか。新しい自分との出会いを意味しているのではないか。

そう考えると、異なる他者と生きる日々は、可能性にあふれている日々なのかもしれません。

他者と対話し、新しい自分と出会う。そして、My Willを捏ね直し、形作る。その先には、ウェルビーイングの共存が待っている。

そんな可能性を見据えて、“異なり”を越えていこう。僕と、あなたの想いが形になるはずだから。


ソラミドについて

ソラミド

ソラミドは、自然体な生き方を考えるメディア。「自然体で、生きよう。」をコンセプトに、さまざまな人の暮らし・考え方を発信しています。Twitterでも最新情報をお届け。みなさんと一緒に、自然体を考えられたら嬉しいです。https://twitter.com/soramido_media

取材・執筆

安久都智史
ソラミド編集長

聴いて書いたり、読んで編んだり、語り合ったり。「青春」と「できずとも繋がる働く」が探究テーマ。妻がだいすきです。
Twitter: https://twitter.com/as_milanista

撮影

中村英史
フォトグラファー

1992年生まれ、神奈川県出身。東京大学大学院修了。ITベンチャーでマーケターとして勤務する傍ら、学生時代の写真店での勤務経験を活かして撮影を始める。修士研究で森林をテーマにしており、季節の事柄に興味あり。

注目記事