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作家・しまだあやの人生が発する問いかけ。答えって、なくてもいいんじゃない?

答えって、楽だ。

こうすればいいんだよ
こう生きればいいんだよ

そのことばに従えば、万事が上手くいく。そんな答えがあれば、日々が楽になる。だからこそ、答えを探し求める。

けれど、簡単には見つからない。そして、迷い悩むしんどさのなか、答えをより強く欲してしまう。

そんな悪循環を過ごすなか、“toi”という場所を知りました。それは奈良市にある、「誰でも好きなときに来ることができる家」。過ごし方のルールはなく、漫画を読んだり、勉強したり、絵を描いたり。各々が好きなように生活しているんだそう。

“toi”=“問い”。そこに、生き方の“答え”はありません。なのに、人は伸び伸びと暮らしている。

もしかしたら、この場所を作った人の考え方には、答えに寄りかからずに生きるヒントがあるのかもしれない。そう思い、“toi”の家主のひとりである、作家しまだあやさんにお話をお伺いしました。

聞き手は、しまださんと以前から親交のある、ソラミドの運営会社スカイベイビーズの代表・安井省人です。

私は答えより問いかけが好きなんですよね

そう語る彼女の人生を知れば、肩の力がふっと抜けるはず。ぜひゆったりと、耳を傾けてみてください。

知らん子も、一緒にご飯を食べれば知ってる子

安井省人(以下、安井):ほんと、久しぶりやね。15年ぶりくらい?

しまだあやさん(以下、しまだ):そんなになるんですね。でも、安井さん全然変わらへん。

安井:そっちが変わりすぎやねん(笑)。いつの間にか、おもろい暮らし方してるし。元々、こんな生活をしたかったん?

しまだ:いや、全然! 元々は、もう一人の家主との同居用に借りた物件で。でも、ふたりとも出張が多くて、家を留守にすることが多かったんです。

家に誰もいない時間が長くて、なんだかもったいないなぁと思ってたんやけど、知り合いの高校生が「じゃあ、俺の秘密基地にしてもいい?」って言いだして。

もちろん大歓迎。次第に、その子と一緒にご飯食べるようになったんです。そしたら、「友達連れてきてご飯会してもいい?」って言うようになって。「ええよ!」と。

しまだ:そんなことを繰り返していたら、みんなが友達を連れてくるようになって、いつの間にか色んな人が出入りするようになっちゃった(笑)。

安井:じゃあ、誰かの知り合いではあるんやね。

しまだ:去年までは!

安井:いまは違うんや(笑)。

しまだ:うん、全然知らん人が来ることもあるかなぁ。でも、一回会えば知らん人じゃなくなるから。その人と会って、何かを一緒に食べる。そしたら、もう知り合いやから。

安井:そうやって、知り合いが増えていく生活はどう?

しまだ:めっちゃ面白い。こっちから出掛けんでも、いろんなものが家の中に入ってくるんですよ。私の知らん文化もいっぱい。ギターの音が鳴っている生活なんてしたことないし、ある日帰ったら知らん子たちが鍋作ってた、なんて経験なかったし。

安井:それを面白がれるのが、しまだあやのすごいところだよね。

しまだ:やろうと思ってやったわけじゃないから、かもしれないですね。基本は放置なんですよ。トイレの場所とかは教えるけど、ルールもないし。

来てくれた人たちも、私も好き勝手に過ごす場所。目的があったわけじゃないから、予想外があっても純粋に面白がれるんやと思います。

「ハンバーガーでも食べる?」ではじまった会社勤め

安井:やろうと思ったわけじゃないって言ってたけど、元々したいことはあったの?

しまだ:うーん、あんまりこれといってなかったですね。就活もできてないし……。

しまだ:ナビサイトで「あなたにオススメ!」って出る会社のエントリーシート、バーっと印刷して。でも、何時間向き合っても、書きたいことが何も出てこなかった。自分で探してない会社だから当たり前なんですけどね(笑)。結局、名前さえも書けずに終わりました。

安井:じゃあ、大学卒業後は何してたの?

しまだ:とりあえず、後輩の学生団体の手伝いとか、イベントの手伝いとか、いろんなところに顔出してましたね。

安井:何でも屋のフリーランス、みたいなもんや。

しまだ:その一環で、後輩が出るまちづくり系のコンペがあったんですけど、後輩が就活の面接日と被って急遽出れなくなって。ピンチヒッターとして、代わりに私が喋ったんです。そしたら、審査員の人に「ハンバーガー食べに行く?」って声かけてもらって。

「行く行く!」って付いてったらごちそうしてくれて、「あなたは何に興味があるの?」「どんなことしたいの?」って聞かれたんですよね。

深く考えず、自分の好きなものやアイデアを喋ってたら「ウチで一緒に働かへん?」って言ってもらえて。その人が、私の前職場の社長です。

安井:「ハンバーガー面接」やったんや。

しまだ:あはは、いま思えば、ですけどね。

でも、その人とハンバーガー食べながら話した時間がすごく楽しくて。具体的に何をやるかは見えてへんかったけど、この人と一緒やったらやることは何でもいい、本屋さんでもたこ焼き屋さんでも、なんでも面白そうだなって。

安井:内容じゃなくて、人やったんやね。

しまだ:そうですね。当時メンバーは3人だったんですけど、みんな素敵な人で、すぐ大好きになって。この人たちと一緒にいたい、と思った。あんまり内容で選んではないです。

安井:社員になってみて、どうやった?

しまだ:「労働」って感じは一切しなかったですね。生活の延長みたいな。もちろん仕事なので、やることはやるんですけど、それが終わって、家帰ってもやることないし、オフィスにキッチンもあったから、ずっとオフィスにいました。

夜になったら、みんなでそうめん湯がいて食べたり、Youtubeを見て笑いあったり。その後に「さ、もういっちょ仕事するか」みたいな感じ。

「今日は誰々ちゃんの誕生日やから、誕生日会しよう!」とか。楽しかったなぁ。

会社辞めたことないから、辞めてみようかな

安井:前に勤めていた会社のことを楽しそうに語れるじゃないですか。それでも辞めたのはどうして? 独立したとは聞いているけど。

しまだ:会社を辞めたことがなかったから!

安井:……えっと、どういうこと?

しまだ:私、「やったことないことをする」のが好きなんですよ。深い理由なしに、知らんことをしたいタイプ。10年勤めていて、ふと思ったんです。「そういえば、私は会社を辞めたことがないんやなぁ」って。そりゃそうなんですけど(笑)。

じゃあ、と思って、辞めてみたんです。

安井:何か、やることが決まっていたわけでもないんや。

しまだ:まったく! 自分が何できるかも分からへんし、それがお金になるかも分からへんし……。だから、Googleカレンダーを公開して「1日1万円でなんでもやります!」をやってみようかなぁって。

安井:また、面白い発想やなぁ。

しまだ:それを3ヶ月くらい続けたら、自分の得意とか好きとかが分かりそうじゃないですか。

例えば、犬の散歩ばっかりいろんな人に頼まれるようになったら、犬に関する仕事探してみよかなって思うし。新しい特技見つかるかもしれへんし。毎日やって、noteとかで日記つけ続けたら、良い実験にもなりそうやなぁって。

安井:それで、何か見つかったの?

しまだ:実は、「最初の1本は何か思い出話でも」と書いたnoteがバズってですね……。エッセイを書く仕事が来るようになったんです。

安井:あ、そこが始まりやったんや。

しまだ:そうなんです。予想外の展開でした。でも、元々「なんでもやります!」のつもりだったし、求められるなら、他の方が喜んでくれるなら、チャレンジしてみようって。

安井:やったことをアウトプットしよう、ってnoteはじめたのが良かったね。

しまだ:記録に残すのが好きなんですよね。歌が得意なら歌に、踊るのが好きならダンスにしてたと思う。でもそういう特技はないから「日記かな」と。そしたら、書いたものをたくさんの人が褒めてくれた。だから、作家として活動するようになったんです。

10分先は、何しているかわからない。

安井:話を聞いていると、変化に柔軟やなって思うんです。何にも縛られていない、というか。

しまだ:嬉しい。自分に素直に生きられてるってことかなあ。人って、素直になっていない状況が続くと、バグってしまう。自分はそうやったし、身近な人がそうなるところも見てて。

しまだ:だから、好きに生きるって言うと乱暴ですけど、私は自分に素直に生きていこうって。最近ネパール餃子にハマってるので、1ヶ月後にはどこかのお店で修行してるかも。本場に行けたらそれが一番いいけどなあ。

安井:なんで、そのスタンスでいられるんやろう? 未来が決まっていないことに、不安を感じる人もいると思うんやけど。

しまだ:あまり考え過ぎないのが、私の生きるペースに合っているんやと思います。どのスパンで人生を考えるか、というか。例えばマグロ漁業している人は、数ヶ月単位で動き方を考えるかもしれない。ラーメン屋さんの店主だったら、日々の売上があるから、一日単位かもしれない。

でも、人によって、時間のものさしは違う。ちょっと極端かもだけど、私は、それが10分単位とかでいいんです。10分後に何があるか、何をしているか分からない。それくらいの状態が、一番調子いいんですよね。

安井:短い単位が、しっくりくるんや。

しまだ:その方が面白いことが生まれたり、周りにも面白がってもらえたりしたんです。「あなたは、あんまり考えてないときの方がいいこと言うよね」って、尊敬する人から言ってもらうこともあったし(笑)。

もちろん、熟考するべき深いテーマの場合は別だけど、はじめに考えたことや直感は、本当に大切にしてます。

安井:考え過ぎないことを、あえて選んでいるんやね。

しまだ:想像や妄想は好きやし、未来に対しての準備も好き。でも計画はし過ぎない。「これだけは大事にしよう」っていうのだけ決めて、いっぱい余白を残したい。

だって、予期せぬことって絶対起こるじゃないですか。自分の人生、予期せぬことだらけやし、周りを見ててもニュースを見てても、本当にそう思います。

安井:特にこのご時世、予想通りに、計画通りにいくことなんて、なかなかないもんね。

しまだ:うんうん。だから、短いスパンで試しながら、ちょっとずつ生きているんです。私は、かなり自由奔放に見られることが多いけど、むしろビビリなんやと思います。さっき「10分単位とかでいい」って言いましたけど、「10分ずつ軌道修正してる」みたいなもんなんで(笑)。

安井:予想や計画に縛られると、身動きとれないもんなぁ。そんなスパンで生きているから、いまの暮らし方ができているのかもしれんね。

しまだ:そうやと思います。いま私はここにいるけど、明日は誰が来るか分からん。でも、私の単位はすごく短いから大丈夫。そんな暮らしが楽しいです。

私がカチカチしなければ、周りもカチカチせずに済むから

しまだ:とはいえ、社会はそんな短い単位で動いてないですからね。思いつきで動きすぎたり、急な提案をしたりして、周りを困らせてしまうこともあるやろうなあ……。

安井:世の中の単位とは違っているやろうしね。

しまだ:組織で働いていたときは、仲間がサポートしてくれる環境やったけど、独立したらそうはいかん。なので、周りに先に弱点を言ってます。「リマインドは遠慮なくいただけると助かります!」「突飛なこと言って困らせてたら気にせず教えてください!」って。

相手との考え方のギャップにストレスを感じる人はいますし、気をつけないといけないことはたくさんあります。でも、そういう人が、社会の流れや単位の異なる人が、いろいろいてもいいなと感じるんですよね。

安井:それは、どうして?

しまだ:うーん。たとえば私が飄々と生きていれば、周りの大切な人も「あ、こういうのもアリなんやな」って、力まずに済むというか。私、『シャーマンキング』の主人公、葉くんに憧れていて。彼は「まあ、なんとかなるよ」ってスタンスなんです。

でもこれは「​やるべきことをきちんとやったのであれば、あとはなんとかなる。信じて今を大事に生きればいい」っていう深さもあって。​そんな感じで、風のように生きていたいなって。

力めば力むほど、闇に落ちていく経験もあったし。飄々と生きることが、自分にとっては強く生きるためのワザみたいな感じで。

安井:柳みたいに、受け流すってことかな。

しまだ:そのスタンスは、私自身が楽ってこともあるんですけど、周りにもいい影響が生まれるといいなって。たとえば組織って、先輩がカチカチしてたら、後輩もカチカチするじゃないですか。

弱みを見せたり、見栄を張らずに生きる先輩もいることで、後輩も伸び伸びやれるかもやし、相談しやすいかもしれないなって。

安井:いや、でも、しまだあやの生活を見ていて、救われる人は多いかも。

しまだ:この家に来てくれる人たちにも、この場所から感じてくれるものがあればいいなと思ってます。

「こんなこと学校でやったら変って思われるかな」ってことを、「ここだったらやってみよかな」ってなったり、「あれ、意外といけた。次は他でもやってみよかな」ってなったり。ここに来ることで、ちょっとでも次への動きが楽になってくれたら嬉しい。

ここにあるのは、答えじゃない

安井:力んでいない生活は、周りの人を楽にさせていると思うよ。白か黒かを規定されないって、実は居心地がいいから。

しまだ:そうなんですよね、答えってつい出したくなりますけど、答えを決めすぎると在り方がカチコチになっちゃって。だから、私は答えより問いかけが大好き。

その時々で考え方も変わるから。何かひとつの答えを出すんじゃなくて、常に問いかけ続ける。その方が性に合ってますね。

安井:答えを求めちゃうと、いまの生活なんてできへんよね。

しまだ:遊びに来る人たちも、ここのことをいろんな捉え方してます。漫画喫茶みたいと言う人もいれば、美術室として使う人もいるし。だから、みんなそれぞれ、ここを表す言葉が違ってて面白い。

安井:「こうあるべきだ」って決めていないのが、心地よいんやろうなぁ。自分が自分のままでいられる感じ。

しまだ:いまお話していて思ったんですけど、私はパターンをいっぱい作りたいのかも。

安井:パターン?

しまだ:生きるパターンをひとつしか知らなかったとしたら、その通りに生きるしかなかったり、ちょっとした違和感があったとしても、不安要素になったり。

でも、いろんなパターンを試して知っていたら、自分に合った生き方を選択できるなあ、って。違和感も不安じゃなくてヒントになるかもやし。

安井:なるほど。

しまだ:選択だけじゃなく、新しくも生み出せるはずやし。私の生活も、いきなり生まれたわけじゃなくて。「シェアハウスしてる友達がいるなぁ」とか「勝手にまちの子どもたちが入ってくる、おじいちゃん家とかあるよなぁ」が合わさってできたようなものやから。

そうやって、いろんなパターンを知ることで、ちょっと楽になるんちゃうかな。

安井:生き方を知ることで、生き方が広がる、と。

しまだ:暮らし方や働き方に迷って、「自分はこうやけど変かなぁ」って悩んだとしても、ここでの生活に触れたことがあったら、ちょっとは前向きになれるかも。

「あの人、変な暮らし方してたな、じゃあこの生き方もアリか」とか「あんな不思議な人もおったし、俺も大丈夫か」とか。

安井:しかも、それで楽しそうにしてるしね。

しまだ:この場所にいろんなパターンを集めたいし、私もいろんなパターンを生きてみたい。そうやって、飄々と過ごしていけたらな、と思います。

答えって、楽だ。

そう思って、答えを探していたんです。でも、答えに従うって、自分の人生を大きな何かに委ねることなのかも、と思うようになりました。それって、自分の人生を生きるってことなのか?

きっと、一人ひとりに合った時間単位があり、生き方のパターンがある。そこに、答えはない。いや、答えがないのではなく、常に“toi”続けることで、無数の答えが見つかるんだ。

パターンを知り、肩の力を抜き、自らに問う。

そんな生き方は、きっと自分の人生だと言えるんじゃないかな。

しまだあや
エッセイや脚本などを書く作家活動を中心に、企画やデザイン、司会業なども。2010年から「HELLOlife」で教育・就活分野のソーシャルデザインに取り組んだのち、2020年6月に独立。noteの記事「今週末の日曜日、ユニクロで白T買って泣く」が話題に。
Twitter:@c_chan1110(https://twitter.com/c_chan1110
note:https://note.com/cchan1110


ソラミドについて

ソラミド

ソラミドは、自然体な生き方を考えるメディア。「自然体で、生きよう。」をコンセプトに、さまざまな人の暮らし・考え方を発信しています。Twitterでも最新情報をお届け。みなさんと一緒に、自然体を考えられたら嬉しいです。https://twitter.com/soramido_media

執筆

安久都智史
ソラミド編集長

聴いて書いたり、読んで編んだり、語り合ったり。「青春」と「できずとも繋がる働く」が探究テーマ。妻がだいすきです。
Twitter: https://twitter.com/as_milanista

撮影

久保秀臣
フォトグラファー

1976年生。B型であることを誇りに思う典型的なB型。
同志社大学卒業後、オーストラリア、アメリカなどを放浪。
現在は、神戸を拠点に水中からドローンまで撮影。

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