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自然体経営は、息苦しい働き手の救いになり得る。ソラミド運営企業に聞いた、周囲とつながる世界 

働くって、我慢すること。そう思っている人は少なくないはずです。

やりたくないけど、仕方ないか
会社のためなら、やらざるを得ないよな

心に棘が刺さっているのを感じつつ、見ない振りをする。

次第に、従業員も経営者も棘の痛みに慣れてしまう。その先に待っているのは、無理が強いられる世界。いま、そんな世界が広がっている気がします。 

棘を抜くのは難しい。けれど、その壁に挑み続けているのが、ソラミド運営企業のスカイベイビーズです。「出社義務なし」「全員兼業」「働く場所自由」「就業時間自由」などをルール化している、珍しい企業。 

代表の安井省人さんが語るのは、「生き方や働き方に悩みを抱えている人を救いたい」ということ。そのなかで掲げているのが、“自然体経営”と呼ばれる経営方針です。 

生きづらさや窮屈さを感じているけど、原因がわからないという人は多いんじゃないか。自然体経営は、そんな人の救いになれればと思ってるんです。 

自然体経営は、迷う人に対してどのような救いの道を示すのか。安井さんのお考えをお聞きしてみましょう。 

それ、頑張ってるんじゃなくて、我慢してるんじゃないの? 

スカイベイビーズのメインビジネスは、Webサイト制作。クライアントと話し合い、締切までにWebサイトを完成させる受託業務のため、働き方や勤務時間を自分でコントロールしづらい仕事です。 

同業種の人たちからは「好きなクリエイティブワークができるのだから、少しの無理は仕方がない。そういうものだ」と聞くことがあります。その気持ちにウソはないのだろうけれど、「我慢」を「頑張り」として無意識にすり替えている気がする。

我慢を続けると辛くなるし、好きだったものも嫌いになる。それはとても寂しいこと。そう感じていた安井さんは、外的要因に左右されない働き方を実現するために、自社でWebストアを運営するEC事業をはじめました。

これなら働き方もスケジュールも、自分たちでコントロールできるはず。けれど、安井さんのなかでは違和感が大きくなることに。 

自分がめざしていることは、単にデザイナーやエンジニアの働き方を守ることなんだっけって。本質的にはそうじゃない。

その人のやりたい仕事やなりたい姿を、外からの抑圧によって無理やり成し遂げるのではなく、内発的な動機や自然な周囲とのつながりによって、夢や目標を自然と追いかけられる環境をつくりたいんだと気づいて。

そう考えたときに、“自然体”という言葉がしっくり来て、自然体経営を掲げ会社で実践しようと考えたんです。 

無理せず、自然体で働きたい人は少なくない。例えば、社会に出ると「成長」を求められます。成長速度は人それぞれなのに、自分に合わない「成長」要求に苦しさを感じている人もいます。一方で、もっと働きたいという気持ちがあるのに、「働き方改革」の名のもとに制限され、やりたいことにのめり込めないという人もいるかもしれません。

自然体といっても人それぞれですが、それでも企業経営者としてマネジメントをするうえで、自然体を定義してみようと安井さんは考えたのでした。 

心地よい関係のなかに、自然体がある。 

自然体経営の“自然体”とは、どのような状態を指すのだろう。安井さんに聞いてみると、「模索中ではありますが」という断りのもと3つの視点を教えてくれました。 

●対自分 
自分に素直でいられること。心の声に耳を傾け、その声に従っている。世間の目を気にせずに自分の興味のあることに没頭できている状態。 

●対他者 
他者を傷つける関係のなかでは、自然体でいられない。独りで生きているのではなく、お互い認め合う関係であること。 

●対社会 
社会に価値を発揮していること。今いる環境で価値を発揮できていることは、居場所があるということ。それは居心地の良い場所で、自然体でいられる場所。 

「自分のしたいこと・できることで価値を発揮し、周囲と認め合って生きている状態」というイメージでしょうか。自然体と聞くと、自身の心のあり方にフォーカスしがちですが、安井さんは「対他者」「対社会」という周囲とのつながりに重きを置いている。そこに、自然体経営のヒントがあるようです。 

自然体経営において、つながりは無視できない。 

ではなぜ、自然体であるためにつながりが重要なのでしょうか。安井さんは、ご自身が住む環境になぞらえて答えてくれました。 

自分が住んでいる田舎には、貯水池から田んぼに水を流すための溝が掘られています。この溝は誰のものでもなく、みんなの共有物。私は田んぼを所有していませんが、だからといって関係ないというわけではありません。 

田畑が健康であって、里山の暮らしが守られるからこそ、その恩恵を受けて私の家の生活も守られている。だからその溝は村全体で守っていく資産なんです。 

都市部では管理会社などによって仕組み化されているので、隣人との関わりを多く必要としないのかもしれません。昔の時代に戻ろうとは思いませんが、近くにいる人とお互い持ちつ持たれつ、影響し合う生き方は自然なあり方だと思うんです。 

企業という組織体でも同様に考えているようです。デザイナーがいて、ライターがいて、エンジニアがいて。独りで完結する仕事はありません。さらには、作り手がいるから買えるとも言えるし、買い手がいるから作れるとも言える。

自社、取引先、仕入先、社員、社員の家族など。様々なつながりのなかにスカイベイビーズが存在するので、自然体経営においてもつながりを無視するわけにはいかないと、安井さんは語ります。 

確かに、生まれてから一度も人と関わらないほうが不自然です。また、心の声に従ってわがまま放題をするとか、何もしたくないから何もしないというのも、違和感が残ります。他人がいるから自分でいられる。周囲との関係は切っても切れないからこそ、つながりのなかの自然体を重要視しているのかもしれません。

全員兼業も、部活も、つながりをつくるため。 

では、「つながり」を自然体経営に取り込むためにどんなことをしているのか。そのひとつに「全員兼業」というルールがあります。複業推奨は聞いたことがありますが、全員兼業は珍しいルールです。なぜ、全員兼業なのか。そうお聞きすると、「自社だけで仕事が完結すると、人間関係も閉じられてしまうから」と安井さんは話してくれました。 

人間関係を豊かにするチャンスを増やすだけでなく、社外で仕入れた知識やスキルを会社に還元することで、自分の価値をより強く発揮することができます。同時に複数の居場所があるということは良い意味で逃げ道になり、心理的安全性にもつながります。

そうすることで、今いる場所がこれまで以上に自然体で生きられる場所になる。人間関係を生態系と捉えて、より自然体で働けるよう、兼業を通じて自分の生態系を広げてほしいんです。 

社会とのつながりを生むための、全員兼業。加えて、社内でのつながりをつくる工夫が、普段接点のない職種と関わるチーム編成で活動をおこなう「部活」です。例えば、ブランディングプロジェクトに総務経理の社員が参加するなど、新しいつながりが生まれるための取り組みです。 

編集の仕事をしていたら、編集に近しい人たちとのつながりができます。このような横のつながりだけでなく、縦のつながりも生み出す装置として「部活」を実施しています。

人と人のつながりの数が増えると生まれるものも増えますし、AさんとBさんのつながりから生まれるものと、AさんとCさんのつながりから生まれるものは違うと思うんです。そういう化学反応も面白いですよね。 

他にも、Webストアを展開することで、日本中に点在するクリエイターとのつながりを作ったり、ワーケーションの普及活動をすることで地方とのつながりを深めたり。

働く個人の生態系だけでなく、スカイベイビーズという企業の生態系を広げているんです。幾重にも重なり合うつながりのなかで、自然体経営を実践しています。 

自然体経営によって、発揮したい存在価値とは。 

聞けば聞くほど、働き手にとっては心地の良い環境。けれど、企業経営は営利活動です。自然体経営は、何を価値として提供し、報酬を得るのだろう。そんな質問を安井さんにぶつけてみました。 

例えば寝不足のデザイナーが、高いクオリティをアウトプットし続けられるでしょうか。健康な人から生まれる健全なクオリティを提供して、対価を頂く。組織マネジメントとしてはあたりまえのことなんですが、そのあたりまえをないがしろにせず、大切にしたいんです。 

企業としての価値にもつながる、自然体経営。その価値を、社内だけでなく社会にも広げていきたいと安井さんは言います。 

自然体経営を社内だけの活動にすると、社内の人数以上に自然体で生きる人を増やせません。自分たちで自然体経営を実践し発信することで、どこか息苦しさを感じている人の助けにもなれればと思っています。 

自社の経営だけでなく、他者とのつながりを通じて、自然体で生きる人を増やしていく。それが、自然体経営の存在価値なのだと言えるのでしょう。 

自然体経営は、 しあわせを測るものさしを、たくさんもつことなのかも。

1円でも多くお金を稼ぐほうがいい。昨日より成長するほうがいい。出世するほうがいい。ある人にとっての自然体が、他の人にとってもそうだとは限りません。たくさんのお金がなくても豊かな暮らしができる現代において、価値は、「お金<自分らしくいられる時間」なのかもしれません。 

人の数だけ、しあわせのカタチがある。そのことをお互い認め合って生きていくことが、自然体経営なのかもしれないと、話を聞いて思いました。

そして、100年前と現代の自然体の定義はきっと違うように、今後も自然体について考え続けることが、自然体経営の肝になる。だからこそ、スカイベイビーズの現時点における、自然体経営の基本思想で締めくくりたいと思います。 

まとまってないし、矛盾もあるかもしれません。でも、それも自然体として、今のありのままの考えを知ってもらえると嬉しいです。 

自然体経営の基本思想

  1. 個々が自分の自然体を意識する 
  2. 成長・成功でなく幸福をめざす 
  3. 成長することだけが正や善や美ではないと心得る 
  4. 自らの存在価値を問い続ける 
  5. 他者をコントロールしようとしない。コントロールは悪
  6. 問題は一人ではなく、他者との関係の間にある 
  7. 自分ができることを他人ができると考えない 
  8. ルールは最大限作らない 
  9. 「場」を大切にし、空間の共有性を大切にする 
  10. 祝祭性の大切さに目を向ける
  11. 個人やチームや組織は役割に生きる
  12. 役職でなく役割を重視する。役割はヒエラルキーとは関係しない。経営者も役割のひとつと考える
  13. 個人をすべてと考えない。個人は他者と関わってこその個人である 
  14. 個人やチームは組織の一部、社会の一部、自然の一部と考え、社内社外関係なく、切れ目なくつながっている生態系の一部であると考える   
  15. 有機的なチームや仲間を創りつづける。始まりがあれば終わりもある
  16. 個人を尊重し、組織も尊重する 
  17. 役割は業務に限らない。役割はあらゆる存在価値である 
  18. 言いたいことを言い合える状態を保全する。言いたいことが言えない状態を嫌悪する 
  19. 自分の答えを安易に他者に求めない。議論や会話を遠ざけない
  20. 役割が「機能する」ために何が必要かを問い続ける
  21. 「機能」を判断する数字(KPI等の指標)は確実を測り、整え、透明化する 
  22. 存在価値や影響力が重なり合わさる組織を創る 
  23. 独立した存在を作らない

ソラミドについて

ソラミド

ソラミドは、自然体な生き方を考えるメディア。「自然体で、生きよう。」をコンセプトに、さまざまな人の暮らし・考え方を発信しています。Twitterでも最新情報をお届け。みなさんと一緒に、自然体を考えられたら嬉しいです。https://twitter.com/soramido_media

取材・執筆

田邊宏明
コピーライター

大手出版社のグループ企業にて2000本ほどの求人広告を制作。採用コンサルティング企業に転職後、採用ブランディング、販促PR、企業理念・行動指針の言語化などを経験。2014年に制作ディレクター・コピーライターとして独立。

編集

安久都智史
ソラミド編集長

聴いて書いたり、読んで編んだり、語り合ったり。「青春」と「できずとも繋がる働く」が探究テーマ。妻がだいすきです。
Twitter: https://twitter.com/as_milanista

撮影

飯塚麻美
フォトグラファー

東京と岩手を拠点にフリーランスで活動。1996年生まれ、神奈川県出身・明治大学国際日本学部卒業。旅・暮らし・ローカル系のテーマ、人物・モデル撮影を得意分野とする。大学時代より岩手県陸前高田市に通い、おばあちゃんや漁師を撮っている。2022年よりスカイベイビーズに参加。
https://asamiiizuka.com/

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