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【スカイベイビーズ対談】 自然体で生きるって、“無理を強いられない”こと? あれこれ考えてみた│安井省人・樋田浩一

『ソラミド』を運営する、わたしたち株式会社スカイベイビーズでは、メンバーや関わる人が自然体で生きるための“自然体経営”を推進しています。

自然体のかたちは人それぞれで、明確な答えがあるものではありません。

だからわたしたちは、「自然体とは何か」「どうして自然体で生きることが望ましいのか」など、答えのない問いに日々向き合い続けています。

この「スカイベイビーズ対談」シリーズは、わたしたちが自然体について模索する過程を残したいと思い、始まった企画。

今回は、代表でクリエイティブディレクターの安井と、アートディレクターの樋田が、自然体の働き方や組織のあり方について、あれこれ話します。一人ひとりが価値を発揮するために大切な環境、他者との関係性、組織に属することの意味など、様々な視点で自然体に必要な要素を考えました。

●スカイベイビーズについて

WEB制作を中心にさまざまなメディアやツールを生み出すクリエイティブ・カンパニー。コーポレートサイト、採用サイト、オウンドメディア、ECサイト等の制作を通じて、人や組織、モノが持つ自然体の魅力を世の中に向けて効果的に発信するサポートを行う。メンバーや関わる人が自分らしく、ありのままの姿で価値を発揮しながら生きるための“自然体経営”を推進。現在、メンバーの全員が個人事業主としても活動している。
https://www.skybabies.jp/

●安井省人

クリエイティブディレクター・代表取締役。クリエイティブや編集の力でさまざまな課題解決と組織のコミュニケーションを支援。「自然体で生きられる世の中をつくる」をミッションに、生き方や住まい、働き方の多様性を探求している。2016年より山梨との二拠点生活をスタート。
https://www.skybabies.jp/aboutus/#yasui-masato

●樋田浩一

アートディレクター。Webメディア運営を手がけるITベンチャー企業・Web制作会社でデザイン・フロントエンド業務を経験したのちフリーランスとして独立。採用サイトを中心にEC、Webメディア、コーポレートなどのサイト制作に携わる。2015年よりスカイベイビーズに参加。
https://www.skybabies.jp/aboutus/#hida-koichi

自分の価値は、他者からの評価で形作られるのかもしれない

安井: 樋田さんは、「自然体とは?」とズバッと聞かれたらなんと答えます?

樋田: ズバッと言うの、難しいですね……。辞書で検索すると、「身体の力を抜いて自然に立つ」とか、そういう意味が出てきます。あとは、物事に力まず挑むとか。

安井: 言葉の意味としては、そのとおりですね。でも、我々が自然体という言葉を使うときの意味合いは、もうちょっと仕事とか、生き方とか、暮らしとかに密着してますよね。

樋田: そうですね。

安井: すごくベタな言葉でいうと、「自分らしい」とかが、まず最初に想起されることじゃないかな。でも、自分らしいって言い方は、ちょっと範囲が広くなりすぎる気もする。

樋田: たしかに。自分らしくいることを、「自分勝手」と同義に捉えられてしまうのはよくなさそうですね。それに、自身のことを理解できているかどうかも、定かではないでしょうし。

安井: 自分の評価は、自分では決められないところがある。「自分らしさ」は、ある種他人の評価でできていることを、基本的には受け入れる必要があると思っています。少なくともスカイベイビーズは会社なので、会社に所属して自然体であろうとするならば、自分の価値を発揮して他者から認められる必要があるんじゃないかなと。

樋田: それが、自然体で働くということにつながる。

安井: そう。つまり自分らしくあることは、「自分を認めてくれる人がいる状況をいかにつくるか」ということでもあるかもしれない。一方で、組織が大きくなればなるほど、その人の価値が何で、どう発揮されているのか見えにくくなる懸念はあると思っていて。メンバー同士のコミュニケーションの方法については、会社の成長とともにこれからも考え続ける必要があると考えているところです。

無理をしない、よりも“無理を強いられない”

安井: 樋田さん的に、スカイベイビーズに所属していることの心地よさをどんなところに感じてますか?

樋田: 自分の場合は……自由度があるっていうのが一番大きいかもしれないですね。フリーランスとして動いてもいるので、そもそもある程度の自由がないと関わり合えないというのが前提としてありますし。

安井: 逆に、樋田さん的に自由じゃない、窮屈だと感じるのはどんな状態?

樋田: たとえば……毎日会社に行かなきゃならないとか?

安井: (笑)

樋田: それで作業に10時間かけられるか、8時間でやめなきゃいけないかが変わるので。自宅で仕事をするスタイルを長く続けてきたのもあって、移動時間などが必要になると、作業に集中するうえで少し窮屈に感じるときがありますね。

安井: 樋田さんは本当にデザインが好きじゃないですか。だから、好きな時間をできるだけ最大化したいんじゃないかなって思う。

樋田: たしかに、それはあるかもしれないですね。自分の場合は、とにかく作業に没頭する日があったり、逆にあまり手を動かさず、アイディアを練ったり。さらにもっとスローダウンする日があったり。そうやってバランスをとっている感じです。

安井: 日中9時-18時で働くのは、たしかに世の中のスタンダードかもしれないけれど、それが普通じゃない人もいるし。その違いもその人らしさだと思います。一方で、自由がある=楽をできると捉えられてはいけないとも考えていて。

樋田: 僕も、“無理をしない”ことが大切とはよく言いますけど、それを“楽できる”ことだと勘違いされやすいのは、悩みどころかなと思っていました。

安井: 自分の成長のために、「今が頑張りどきだ」って、多少無理をすることもあるじゃないですか。でもその無理によって、新たな自分の価値を獲得できたり、周りから評価されたり。その後の自然体につながることがあるわけで。決して、無理=悪ではないんですよ。

樋田: 無理をしないというよりも、“無理を強いられない”と表現するほうが、誤解は減るのかもしれませんね。

安井: 今、成長の話を例に挙げたけど、成長に関しても“無理強い”はよくないと思っていて。ただし、生きものが必然的に成長するように、生きていくうえで何かしらの成長は必要だと思うんですよね。自分が生きていくための資産みたいなものは、幸福に生きるためにも必要なんじゃないかと。このさじ加減、わかります?

樋田: スピードが人それぞれだということを認めてあげるみたいな感じですか? 「早く成長しろ」って、強要するのはダメ。

安井: そうそう。ここまでの話を踏まえると、価値発揮しやすい環境というのは、成長のための経験を提供できる環境だとか、個々が自発的に努力をしたいと思える環境、という意味にもなってくるのかもしれないなぁ。

認められるのは、身近なところからでいい

樋田: 自然体でいられることは、働く側からしたらもちろん喜ばしいことですけど、マネジメントする立場としては、組織としてまとめて、まわしていくことは簡単じゃないですよね。トップダウン的な組織より、経営に手がかかると思います。数値化できないことも多いですし。

安井: 数値化できないのは、本当にそうですね。これから何を肝にマネジメントすれば自然体経営が成立するのか、KPIみたいなものは見つけなければいけないと思ってます。それは、すごくファジーな言い方をすると、みんなの幸福度みたいなところかもしれない。

樋田: 自然体で働くことや自然体の組織を作ることは、「手段」だと思うんですけど。その先に、安井さんはどんなことを思い描いていますか? 

安井: ちょっと胡散臭い表現になってしまって嫌だけど、「自然体経営で人々を幸せに」ってことかなぁ。

樋田: 自然体で生き生きと働く人が増えれば、気持ちに余裕が生まれて人にも優しくできて、世界がちょっと平和になる、みたいな。

安井: そうそう。この辺の表現は、怪しい会社だと思われてしまわないように、今いろいろと考えてるところなんですよね。

樋田: 頭ごなしに自然体を推奨しすぎると、変な勧誘みたいになってきますもんね(笑)。僕たち自身も、自然体で生きることの価値について、多角的に考え続けなければならない。自然体で働くことが幸せに結びつくと思えるのって、改めて考えるとどうしてなんでしょうね。

安井: うーん、マズローの5段階欲求ってあるじゃないですか。人間の欲求を、ピラミッドにして5段階に分ける考え方。あれに当てはめると、少なくとも現代の日本においては、普通に生きていくにはなんの危険もないので、ベースにある「生理的欲求」と「安全の欲求」は満たされていることになる。すると、今度は自分が承認されたいとか、自己表現したいとか、高次の欲求が重視されるようになったというのがあって。その「認められたい」といった欲求がうまく満たされないと、非常に大きなストレスが生まれる。SNSとか、まさにそうですよね。

樋田: なんでも情報が入ってくるから、必要以上に他人と比べて、勝手に自己肯定感を下げてしまう人が多くなっているように感じます。

安井: 承認欲求とか自己実現欲求を求めるのは人間の性として仕方ないけれど、実現の手段は全世界に向けたSNSじゃなくて、ちいさなコミュニティでもいいじゃないかと思うんです。身近な人に認められて、感謝されて、助けあって。それで自分のペースで成長を続けられる。自然体で働くことは、そうやって、人間としての欲求を無理なく満たすことにつながっていくと思います。

無理を強いられずに生きる人を少しずつでも増やしたい

安井: ここまでいろいろ話したのを踏まえて聞くんですけど。樋田さんにとっての自然体って、どんな状態だと思いますか? 

樋田: 自分が考える自然体に関しては……冒頭で話に挙がった“自分らしいこと”は含めないで考えてますね。

安井: おお、なるほど。

樋田: そもそも安井さんが言っていたみたいに、周りからの評価によって形作られるものがありますし。もしくは20年、30年たたないとわからないこともあるので。自分でも、自然体だとは気付いていないことがあると思うんです。

安井: 樋田さんの価値は、デザイン力もそうだし。深く考えてアウトプットできる能力だったり、優しさだったり。いろいろあるけれど、認めてくれる人がいるからこそ意味をなすことでもあるからね。

樋田: だから自分のなかでは、無理をしていないとか、ちょっと余裕を持てているとか。自由……は、どちらかというと結果な気もするんですけど。あとは、興味があることに取り組める状況だとか。そういう類のことが、自然体の要素になるのではと思っています。

安井: 無理をしないことって、樋田さんにとってはどんなことなんでしょう?

樋田: 単純に、体力的なメリットですかね。一週間に徹夜2回ペースとか、つらいじゃないですか。昔はよくやってたんですけど。

安井: 俺もやってた……(笑)。

樋田: そういう無理が思い浮かびますけどね。結局は身体を壊したりして、長く続けられないじゃないですか。長く続けられないことは、あまり良くないと思うので。

安井: 一方で、今スカイベイビーズにいるメンバーは、昔何かしらの無理が続いてしんどい思いをしたことのある人が大半だよね。

樋田: どこかで無理をした経験があるから、自然体でいられることのありがたみを感じて、スカイベイビーズを居心地よく感じている人が多いのかもしれないですね。

安井: だからこそ、みんな思いやりがあるというか。つらい経験も、あとから思い返せば成長につながった……っていうのもあるけれど、それで壊れるとか、何かしらの傷が残ってしまうのはよくないことだと思うので。自然体でいられないことに苦しんだ経験をもつ人が多いっていうのもウチの強みのひとつとして、無理を強いられずに生きられる人を少しずつでも増やす取り組みができたらいいよね。


今回の対話の軸となったのが「価値の発揮の仕方」「無理を強いられない環境」「他者と認め合える関係性」。

自分の価値は、他者の視点からでなければ認識できないことがあるでしょう。認められる喜びも、他者の存在なしには感じることができません。

自然体を考えるとき、つい自分自身の心の欲求へと目が向きがちですが、他者の存在や関わりがあってこそ、自分らしく、心地よく生きられるのではと、今回の対話を通して気付かされました。

これからも、スカイベイビーズでは「自然体とは何か」という問に向き合い続け、心地よく、無理を強いられずに生きられる人が増えるよう発信を続けていきます。


ソラミドについて

ソラミド

ソラミドは、自然体な生き方を考えるメディア。「自然体で、生きよう。」をコンセプトに、さまざまな人の暮らし・考え方を発信しています。Twitterでも最新情報をお届け。みなさんと一緒に、自然体を考えられたら嬉しいです。https://twitter.com/soramido_media

執筆

笹沼杏佳
ライター

大学在学中より雑誌制作やメディア運営、ブランドPRなどを手がける企業で勤務したのち、2017年からフリーランスとして活動。ウェブや雑誌、書籍、企業オウンドメディアなどでジャンルを問わず執筆。2020年からは株式会社スカイベイビーズにも所属。
https://www.sasanuma-kyoka.com/

撮影

飯塚麻美
フォトグラファー

東京と岩手を拠点にフリーランスで活動。1996年生まれ、神奈川県出身・明治大学国際日本学部卒業。旅・暮らし・ローカル系のテーマ、人物・モデル撮影を得意分野とする。大学時代より岩手県陸前高田市に通い、おばあちゃんや漁師を撮っている。2022年よりスカイベイビーズに参加。
https://asamiiizuka.com/