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片付けとは、生き方を見直すこと。整理収納アドバイザー・三吉まゆみさんが“背伸び”を手放して得た、等身大の暮らし

整理収納アドバイザーとして活躍する、三吉まゆみさん。

SNSやブログでの情報発信、セミナーの開催やオンライン片付けサポートなど、さまざまな手段で片付けに悩む人を救う活動をされています。

片付けは、心地よい暮らしを維持するために行うこと。

つまり、自然体で生きるための行動のひとつともいえるはず。

今回は、三吉さんが整理収納アドバイザーとして活動するようになった経緯や、大切にされていることを聞きました。

お話を聞いてみると、なんと三吉さんご自身が“汚部屋”出身だったという意外な過去も明らかに。

現在のスッキリとした暮らしを手に入れられるまでの道のりや、その後の心境の変化など、三吉さんの経験談を通して、心地よい自然体の暮らしについてのヒントを探りたいと思います。

私も以前は、片付けられなかったんです

三吉さんが、整理収納アドバイザーになられたきっかけ・経緯を教えてください!

三吉さん

結婚する少し前から雑貨屋さんでアルバイトしていたのをきっかけに、インテリアに興味を持つようになったんです。

結婚後は自分の家でも楽しみたいなと思って、少しずつインテリアにこだわってみたり、DIYを始めたり。ブログを書くようになったのも、そのころでした。

ご結婚を機に、「自分たちの暮らしにもっとこだわってみよう」と思うようになったんですね。

三吉さん

そうですね。結婚するまで実家に住んでいたので、自分で好きなようにこだわれるのが、楽しくて。

実家を出ていろいろこだわってみたくなるの、わかります。

三吉さん

その後は医療事務のパートをしていた期間もあったのですが、「何か好きなことを仕事にできないかな?」と考えるようになって。インテリアコーディネーターの資格取得を目指して勉強するようになりました。

1年ほど頑張って勉強をして、無事に資格を取得でき、ふっと力が抜けたときに「じゃあ、片付けの資格も取ってみよう」って思ったんです。

どうして、そこで「片付け」だったんでしょう?

三吉さん

部屋が片付いてないとインテリアも楽しめないなって、気付いたんですよ。

なるほど、たしかに……!

三吉さん

やっぱり、心地よい暮らしを送るためにも、片付けって大切です。

というのも、私自身“汚部屋”出身だったので、身を持って実感できているというか……。

え! 三吉さんが汚部屋出身!? 意外!

三吉さん

実家の自分の部屋が、まさに汚部屋で。洋服をタンスにしまわなかったり、バッグを床に置きっぱなしにしたり。買いものしたことに満足して、購入品を紙袋のまま放置したり……。

わぁ。その気持ちわかる。

三吉さん

当時は何の疑問も持っていなかったんですけど。結婚して実家を出たことで、「自分の部屋は物が多い」って、気付くことができました。

出した物をしまえなかったり、床に置きっぱなしにしたりしてしまっていたのは、いま思えばどうしてだったんでしょう?

三吉さん

物事をきちんと完了する習慣がなかったんでしょうね。やりかけで放置することが、癖になってしまっていたというか……。

現在の三吉さんのご自宅

ご結婚されてからは、その癖は治まったんですか?

三吉さん

完全には治っていませんでした。

床に物を置いたり、椅子にコートをかけっぱなしにしちゃったり。それで、「さすがに散らかりすぎ」と危機感を覚えるか、お客さんが来るタイミングで慌てて片付ける……の、繰り返しでした。

いまの三吉さんからは想像がつかない!

三吉さん

散らかっていたころは、家にあるものをちゃんと把握できていなくて、似たような物を買ってきてしまうことがありましたね。探し物もなかなか見つからないし。日常生活での小さな不便が多かったなぁ、と、いまでは思います。

「いつか片付けなきゃ……」と、常に追われているようなストレスもありました。

部屋は、心を映す鏡

「片付けなきゃ」と常に追われる感じ、めちゃくちゃ共感です。共感できるからこそ、以前の三吉さんが片付けへの意識を変えるのは大変だったのではと想像します。どうして、スッキリとした暮らしを実現できるようになったんでしょうか?

三吉さん

それまでの私は、なんとなく散らかして、放置して、面倒だなぁと思いながら片付けて……の繰り返し。おっしゃる通り、自分が“片付けられる人”になる姿なんて想像できませんでした。

でも、整理収納アドバイザーの講座を受けたことで、理屈を理解できたというか。収納場所から工夫して「片付けやすい仕組み」を作るなど、その場しのぎではなく、根本的なところから変える方法を知れたのが大きかったですね。

たしかに、何ごとも理屈を知ると「これなら自分にもできるかも」と、心理的なハードルが下がったりしますもんね。

三吉さん

あとは、整理収納アドバイザーの資格を目指す少し前のタイミングで、「ミニマリスト」という言葉が流行り始めたことにも、背中を押されたかもしれません。

「ミニマリスト」、ここ数年でよく耳にするようになりました。

三吉さん

それまで私は、「物がたくさんあるほうが豊か」だと思っていたので、少ない物で豊かに暮らすという考え方が、結構衝撃的で。そこから、自分にとって本当に必要な物を見直してみようと考えるようになりました。

具体的に、見直して、手放した物はありますか?

三吉さん

ていねいな暮らしに憧れていたのもあって、以前は「なんでも手作りしよう」みたいな思いがあったんです。保存容器やジャム用の瓶をたくさん持っていたり、ホームベーカリーも買ったりして。でも、結局あまり使っていなかったんですよね。

それで私の性格と照らし合わせたときに、これは“誰かになりたくて持っていた物”なのかも、と気付きました。

ちょっと無理をしてしまっていたところがあったんですね。

三吉さん

そうなんです。自分は、思っていた以上に面倒くさがりだったんですよね。

お菓子やパンを手作りするのに憧れていても、甘いものが食べたくなったら、手っ取り早くコンビニに買いに行きたいと思っちゃう。

憧れと現実の間に、ギャップがあった、と。

三吉さん

改めて自分と向き合って、パン作りの道具や、必要以上に持っていた保存容器を思い切って手放しました。「手作りしなきゃ」と、追われるような感覚から解放された感じがします。

「やっぱり私には合わなかったんだな」って。そんな自分を受け入れてあげられるようにもなりました。

本当の自分を理解できるようになっていったんですね。

三吉さん

そうそう、まさにそんな感じです。

片付けを通して、本来の自分を知った気がしますね。自分にとって本当に必要なもの、大切なものを見極められるようになった感じ。

本当に必要なものを見極める力は、何かほかの面でも役に立ったりしているんですか?

三吉さん

優先順位をスムーズに決められるようになりました。

たとえば仕事でも、以前は予定をぎゅうぎゅうに詰め込んでしまうことがあったのですが、「これ以上はキャパオーバーかも」「私って、どういう働き方がしたいんだっけ?」と、冷静に状況を見てコントロールできるようになってきたかもしれません。

「どうしても自分に合わないな」ってことも分かるようになって、無理をしない勇気も出てきました。

片付けでの気付きが、取捨選択の力を高めてくれたんですね。

三吉さん

そうなんです。

それに、部屋が片付いているとスムーズに行動できるようにもなります。

散らかっていると、何かやりたいことがあってもまずは片付けなければできないことがありますよね。よくある例でいうと、テーブルの上に物が多くて、ご飯を食べるために「まずは片付けなきゃ」ってなる。

あるあるですね……。

三吉さん

思い立ったらすぐに行動できるのって、身軽ですごくいいですよ。日常生活での小さなストレスからも解放されますし、本当に必要なことに集中できます。

部屋が片付いていると、頭の中も、心の中もスッキリする感じがあるんです。よく、「部屋は心を映す鏡」みたいに言われることがありますが、本当にそうだなぁと思います。

無理をせず、心地よく暮らす

整理収納アドバイザーとして活動を一本化されてから2〜3年ほど経つとのことですが、何か軸となる考えや、ポリシーのようなものは見えていらっしゃいますか?

三吉さん

最近よく思うのは、自分に合う片付け方を知らない人がやっぱり多いということ。

なんとなく「本に書いてあるから、このやり方が正しい」と受け身になって、「分かっちゃいるけど、できない」とつまずいてしまう人がたくさんいます。

だから、教科書のような正解を発信するだけではなく、それぞれの“答えの出し方”を伝えていくことが、私の役割なのかなと考えています。

たしかに、SNSなどで収納のハウツー情報を見ても、結局自分にはできない……と、あきらめてしまうことがあります。

三吉さん

ありますよね。その気持ち、私もわかります。

部屋が散らかる原因って、人それぞれです。物が多いことが原因の場合もあれば、収納場所の問題でうまくいっていない人もいる。家族とのコミュニケーション不足で散らかってしまうこともありますし、忙しくて時間がない、という人もいます。

いつも、なんとなく散らかってしまうばかりで、原因にまで考えを巡らせることって意外とないですね。

三吉さん

本やネットで情報を集めることは、もちろんためになります。「片付けよう」と思って行動に移しているわけですし、すばらしいですよね。

でも、せっかく得た情報も、活用できなければもったいないですから。そこで、本来の自分と向き合って、自分に合う方法をイメージすることが大切になってきます。すでに、取捨選択は始まっているんです。

受け身になるだけではダメですね。ちゃんと、自分の性格やライフスタイルを理解して、無理のない方法を選ぶことが大切だと。

三吉さん

私が整理収納のサポートをするときは、チェックリストを用意して、お客さまと一緒に原因を探るところから始めます。原因が見えて初めて、その後の適切な対策を考えられますから。

散らかしてしまう癖を克服した経験を持つ三吉さんだからこそ、片付けがうまくできず困っている人に寄り添ったアドバイスができそうですね。

三吉さん

共感できるのは大きいですね。つまずいてしまうときの気持ちもよくわかりますし。

SNSなどで三吉さんが発信されている内容を見ていても、本当にそれぞれの事情に寄り添っていらっしゃいますよね。たとえば、頭ごなしに「これは不要!」とは絶対に言わないあたりも、素敵だなと思っていました。

三吉さん

うれしい。ありがとうございます。

これは私の個人的な意見ではあるのですが、「ミニマリスト」っていう生き方は、物の量のことじゃないのかも、と最近思うんです。

「物の量じゃない」……?

三吉さん

ミニマリストと聞くと、ものすごく持ち物が少ない人をイメージすると思うんですけど。じつは、物の量はそんなに関係ないんじゃないかって。

「頭の中がシンプルに整理できているから、本当に必要なものだけに絞ったら、結果的に物が少なくなりました」くらいの感覚なのかな、と。

なるほど。それでは極論にはなりますが、きちんと自分の内面と向き合ったうえで「あれもこれも必要だけど、これが私にとっていちばん心地いい!」という答えにたどり着いたのなら、ある意味それもミニマリストと言えるのかもしれませんね。

三吉さん

うん、そんな気がします。

私は本を読むのが大好きで、今でも紙の本を買うんです。電子書籍は、私の場合はどうしても身体に合わなくて。ある程度増えたら手放すこともありますが、本を手に入れることに関しては「物が増えるからダメ」とは考えていません。これは、私にとって必要なものだからいいんです。

素敵な考えですね。片付けることの本質が見えた気がします。最後に、三吉さんが考える自然体の暮らしやお部屋について聞かせていただけますか?

三吉さん

自分と家族の暮らしを中心に考える部屋……って感じでしょうか?

「人に見せるため」とか、誰かの正解に当てはめてしまうと、いつか無理が生じてしまうので。背伸びしない、ありのままの自分たちの暮らしを楽しめる部屋が、自然体なんだと思います。

理想を無理やり自分の暮らしに当てはめようとしても、ギャップがあると長続きしないですもんね。さきほどの、三吉さんのお菓子作りのお話もそうですし。

三吉さん

そうなんですよね。

憧れを持ってチャレンジしてみることは、もちろん素敵なことだと思います。でも、それを窮屈に感じるようになったら、手放す時期なのかなって。

憧れと現実にギャップが生じると、「できない」自分に後ろめたさを感じてしまいます。それで、自己肯定感を下げてしまってはもったいないですから。

本来の自分を受け入れて、自信を持って。無理をせずに、心地よく暮らせる人が増えたらいいな、と思います。

三吉まゆみ

整理収納アドバイザー/インテリアコーディネーター。東京都国分寺市を拠点に活動。1LDKの賃貸に夫婦二人暮らし中。2021年3月に、初の著書『ずぼらな私にもできる汚部屋脱出モノ減らしトレーニング』(主婦の友社)を出版。自身も“汚部屋出身”というバックグラウンドを活かし、セミナーの開催やオンライン片付けサポートなどを通して、片付けに悩む人を手助けしている。

Instagram: @miyo_344


ソラミドについて

ソラミド

ソラミドは、自然体な生き方を考えるメディア。「自然体で、生きよう。」をコンセプトに、さまざまな人の暮らし・考え方を発信しています。Twitterでも最新情報をお届け。みなさんと一緒に、自然体を考えられたら嬉しいです。https://twitter.com/soramido_media

取材・執筆・撮影

笹沼杏佳
ライター

大学在学中より雑誌制作やメディア運営、ブランドPRなどを手がける企業で勤務したのち、2017年からフリーランスとして活動。ウェブや雑誌、書籍、企業オウンドメディアなどでジャンルを問わず執筆。2020年からは株式会社スカイベイビーズにも所属。
https://www.sasanuma-kyoka.com/