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ヨガは、今の自分を見つめる「問診」の時間│大人の習いごと図鑑vol.4「ヨガ」なおこさん

自信をつけたり、新たな居場所を見つけたりと、自分を愛する気持ちを高めるためにおすすめなのが、”習いごと”。

習いごとは、今まで触れたことのない世界に触れ、新しいことを知り、「できた!」の成功体験を積み重ねる、とても前向きな行いです。ソラミドmado編集部にも、日々の停滞感を打破したいと習いごとを始め、新たな世界が広がって前向きになれた経験を持つメンバーがいます。

同じように日々モヤモヤを抱えて過ごす人や、前向きになりたい人に、習いごとの良さを知ってほしい。そんな思いで生まれたのが、ソラミドmadoの連載企画『大人の習いごと図鑑』です。実際に習いごとを楽しむ人にお話を聞き、それぞれの習いごとの魅力を紹介するとともに、その人の内面やライフスタイル、お仕事などにどんな影響があったかについて探ります。

第4回のテーマは「ヨガ」。6年ほど前からヨガを習うなおこさんにお話を聞かせてもらいました。

完璧を目指さず、できない自分も受け入れる

── そもそも、なおこさんがヨガを始めようと思った理由は何だったのでしょうか。

ヨガを始めたのは約6年前。社会人生活に慣れてきて、プライベートで何か新しいことを始める余裕が出てきたころでした。

当時はとくに趣味がなかったのですが、家でじっとしている生活が耐えられなかったんですよね。年齢を重ねるにつれて、いつまでも健康な体でいたいという気持ちも強くなっていて、体を動かさないと脳も体もなまってしまうような気がしたんです。

そんな時、たまたま近所にヨガスタジオがオープンしたことを知りました。しかも月額固定制で通い放題。コスパも良いし、それほど負荷がかからないヨガなら、初心者の私でも始められそうだなと思って。そのような好条件が重なって、まさにチャンスが来たという感じで飛び込んでみました。

── もともとは健康維持のために始められたのですね。ヨガではどんなことをするのでしょう?

ヨガインストラクターの指示に従いながら、アーサナと瞑想を行います。アーサナとは、ポーズをとること。アーサナを深めるのがメインで、最後に瞑想をすることが多いですが、瞑想からスタートすることもあります。

瞑想で大事なことは、呼吸に集中すること。何も考えず、ただ吸って吐くことだけに意識を向けます。

──呼吸に集中する。シンプルですが、なかなか難しそうです。

そうなんですよ。呼吸に集中しようとしても、その日あった嫌な出来事を思い出してしまったり、余計なことを考えてしまったりと、雑念が入ることがあります。

そうなったときに大事なことは、自分を否定しないことです。ちゃんとできていない自分はダメだとか、もっと集中しなければいけないとか、そういうことは思わずにありのままの自分を受け入れるんです。

例えば、会社であった嫌なことを思い出したとしたら、今の自分は会社のことで悩まされている、ということにただ気づく。そして「それはそれ」として一旦脇に置き、また呼吸に集中するんです。瞑想は呼吸に集中する訓練みたいなものだと感じますね。

── 呼吸に集中できるとどのような良いことがあるのでしょうか。

脳も心もすっきりと軽くなる感じが間違いなくあって、集中力も高まります。始業前や仕事の合間など、1分でも瞑想をするとその後の仕事がとてもはかどるんですよ。そうやって、日常生活に活かせるのも瞑想の良いところだと思います。

でも、もし雑念に振り回されて呼吸に集中できなかったとしても、まったく問題ありません。普段はそういった雑念があることさえも見過ごしてしまいがちですから、気づけただけで十分なんです。ヨガにおける瞑想は、自分を見つめる一つの指標のようなものですね。

── 「気づくだけで十分」という考え方が素敵ですね。一方でアーサナをとっているときはどんなことを考えているんですか?

アーサナ中は、自分自身の体を問診しているような感覚です。ヨガのアーサナって、背中や首、脚、股関節など伸ばす箇所によって異なるのですが、同じアーサナでも日によって感じ方が違うんですよ。

昨日はしなやかに伸びていたけど今日は凝っているな、というように、体を動かすことで今の自分の調子がわかる。それが面白いんですよね。

そして体の痛みや凝りを感じたとき、先生によっては「無理をしないように」と言われます。痛みや違和感を無視していつも通り体を動かすと、かえって痛みを悪化させてしまうこともありますから。

そうやって今の自分の状態を知り、体を労わってあげることで結果的に自分に優しくなれた気もします。ヨガはよく「心と体をつなぐ」と表現されますが、まさにそれが体現できているように感じますね。

──問診という言葉、とてもしっくりきますね。その言葉だけで、ヨガの本質が伝わってきます。

そうですよね。ヨガの目的は、上手に呼吸をすることでも、完璧なアーサナをとることでもありません。瞑想によって、今の自分の思考に気づき、アーサナを深めることで体の状態を知る。そうやって自分と対話をし、どんな自分であってもそれを受け入れることに価値があると思っています。

もともと私は飽きっぽい性格でヨガも続くか不安だったのですが、こんなにも長く続けられたのは、ヨガのそういう考えが自分に合っていたからだと思います。目標達成のためにがむしゃらに頑張るというよりも、ありのままの自分を受け入れつつ、できるアーサナを増やしていく。無理せず、自分のペースで進められるからこそ、楽しめているのだと思います。

ヨガが教えてくれた「ありのまま」で生きる道 

── ヨガを始めて、なおこさんにどんな変化がありましたか?

まず一つは、風邪を引かなくなりました。ヨガを始めてから約6年間、ほぼ風邪を引いていないんですよ。健康でいたいという気持ちが高まって、早寝早起きをしたり、栄養バランスのとれた食事を作ったりと意識している部分はありますが、免疫力が上がったのは間違いありません。

もう一つの変化は、転職をしたことです。以前勤めていた会社はむしろ好きな方だったし、人間関係も良好だったのですが、自分が本当にやりたいと思っていた仕事を100%できていたわけじゃなかったんですよね。

それでも、与えられた仕事を頑張ろうと思って当時は邁進していたんですけど、ある日、それまで溜め込んでいた感情が爆発して涙が止まらなくなってしまって。そこで初めて、自分の本心に蓋をし続けていたことや、本当はやりたい仕事がなかなかできなくて苦しかったことに気づいたんです。

── 我慢していることに気づかずに頑張り続けていたのですね。

このまま会社に残るべきか、本当にやりたい仕事ができる会社へ転職すべきかで迷いましたが、最終的に後者を選びました。

決断の際に支えとなったのはヨガで意識してきた「ありのままの自分を受け入れる」という考えでした。いつの間にかその考えが染みついていたのか、ふと、これからは自分の本心に正直になろうと思ったんです。ヨガをやっていなかったら、自分の気持ちに蓋をしたまま同じ会社で我慢し続けていたかもしれません。

── ヨガの教えが、人生の大きな決断にも影響を与えたんですね。転職後の働き方にも変化はありましたか?

以前よりも、思ったことを溜め込まず、積極的に発言するようになりました。もちろん、自分の意見を押しつけたり、相手を傷つけたりしないようにという配慮はしていますが、昔に比べて自分の考えを否定しなくなったと思います。

そして、「自分を否定しないこと」の延長線上には「他人を否定しないこと」もあるのではないかと最近気づいたんですよね。自分は自分、その人はその人、というように、より客観的な視点でそれぞれの考えを尊重できるようになったというか。たとえ自分と違う意見が出たとしても、まずは絶対に否定しない。相手の意見を一旦受け止めた上で、自分はどう思うか、ということを伝えるように強く意識するようになりましたね。

── 自分だけではなく、他の人の「ありのまま」も受け入れられるようになったんですね。

まさにその通りです。

さらに、仕事が充実するようになると、以前よりももっと純粋にヨガを楽しめるようになったんです。きっと自分の気持ちに蓋をしていたころの悩みがなくなって、余計な雑念が入りにくくなったからだと思います。自然体な状態でヨガそのものに集中できる時間が増え、今は心からヨガを楽しんでいます。

── 心の状態がヨガに直接表れるのも面白いですね。最後に、なおこさんの今後の理想を教えてください。

実は、ヨガを続けるうちにさらなる体づくりに挑戦したいという気持ちが強くなって、2024年3月からピラティスも始めました。もちろんヨガをやめたわけではなく、朝のオンラインレッスンに参加したり、ヨガを始めた頃からお世話になっている先生が所属しているヨガクラスやイベントへ行ったりしています。

ピラティスを始めたことで、ヨガの良さを再認識できたと思っていて。ピラティスは姿勢改善や筋力強化に重点を置きますが、ヨガはやはり、自分との対話なんですよね。体が凝っていたら無理をせず自分を労わったり、呼吸に集中できない自分をそのまま受け入れたり。そんなふうに、心と体の繋がりを感じられる点がヨガの大きな魅力だと思います。

私の理想は、年齢を重ねても心身ともに若々しく健康でいることです。その理想を実現するために、ヨガは欠かせない存在になりました。これからも心と体を良い状態で保てるよう、自分との対話としてのヨガをずっと続けていきたいと思っています。

なおこさんが現在受けているオンラインヨガレッスン:https://minefit.jp/

自分と対話をし、ありのままを受け入れるヨガ。なおこさんが転職という大きな決断をする際、ヨガで培った考え方が支えになったように、ヨガは単なるエクササイズを超えた、生き方に影響を与える実践なのだと感じました。

完璧じゃなくていい、できない自分も受け入れる。そんな考え方を知ることで、ヨガをもっと身近なものに感じられるようになった気がします。日記や散歩のように、日々の自分へのケアとして取り入れてみてもいいのかもしれません。

『大人の習いごと図鑑』では、今後もさまざまなジャンルの習いごとにフォーカスし、ライフスタイルやキャリアにどんな良い影響があるかお話を聞いていきたいと思います。次回もお楽しみに。

ソラミドmadoについて

ソラミドmado

ソラミドmadoは、自然体な生き方を考えるメディア。「自然体で、生きよう。」をコンセプトに、さまざまな人の暮らし・考え方を発信しています。Twitterでも最新情報をお届け。みなさんと一緒に、自然体を考えられたら嬉しいです。https://twitter.com/soramido_media

企画・取材・執筆

上野彩希
ソラミドmado編集部

岡山出身。大学卒業後、SE、ホテルマンを経て、2021年からフリーランスのライターに。ジャンルは、パートナーシップ、生き方、働き方、子育てなど。趣味は、カフェ巡りと散歩。一児の母でもあり、現在働き方を模索中。

X:https://x.com/sakiueno1225

撮影

荒川千波

東京下町在住のフォトグラファー。アシスタント、カメラマン勤務を経て独立。下町人情を大切にしながら、取材や広報分野をはじめとする人物撮影を中心に活動中。

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