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愛を形にし、人と人の心をつなげる仕事│私の天職、見つけました。Vol.4吉川梨沙さん(ウェディングプロデューサー)

自分の仕事に対して、自信をもって“天職”だと言い切れる人はなかなかいません。

でも誰もがきっと、天職だと誇れる仕事ができたらと憧れの気持ちを抱いているのではないでしょうか。

私の天職、見つけました。』は、「天職に就いている」と胸を張って自分らしく活躍する人にインタビューを行い、「天職とは何たるか」を探る連載企画です。

今回登場いただくのは、株式会社CRAZYでウェディングプロデューサーとして働く、吉川梨沙さん。

吉川さんは、数回の転職やフリーランスとしての活動を経験したあと、2022年、34歳のときに今のお仕事に就きました。

ウェディングプロデューサーへの転職の原動力となったのは、前職時代に人間関係で悩んだり、ご自身のご家族の問題を乗り越えたりしたことによって芽生えた、ある想いだったといいます。

そんな吉川さんは、現在「パートナーシップの分断を解消したい」「世の中から孤独をなくしたい」という願いを持ち、いきいきと活躍されています。

吉川さんがウェディングプロデューサーのお仕事にたどり着くまでの道のりや、大切にされていること、今のお仕事に込める想いを聞いてみると、「天職」についてのヒントがたっぷりと散りばめられていました。

人と人のつながりを大切にし、パートナーシップの分断解消に貢献したい

──まず、どんなお仕事をされているのか教えてください。吉川さんは「ウェディングプロデューサー」としてご活躍されていますが、一般的な「ウェディングプランナー」とはどう違うのでしょうか?

「結婚式のお手伝いをする」という点では、皆さんが想像されるウェディングプランナーの仕事と似ている部分も多くあります。しかし、私たちが「プロデューサー」と名乗っているのは、結婚という人生の節目において結婚式を挙げるお二人が本当に実現したいことを形にするための”プロデュース”を重視しているからです。

特に私たちの仕事で特徴的なのが、お二人の人生について時間をかけてじっくりとヒアリングするという点。お二人の原点であるご家族のこと、幼少期のこと、今につながるターニングポイントや、人生に影響を与えたキーパーソンのことなど、それぞれ深堀りしていきます。そうやってお二人の人生を振り返りながら、結婚式で伝えたい想いや実現したいことをすくい上げていきます。

最近は情報にあふれていることもあってか、結婚式に対して「こんなこともできる」「あんなこともできる」と、必要以上に要素を盛り込みすぎてしまったり、その結果どこか形式的に流れに沿ってこなすようなものになってしまうこともあると感じています。だからこそ私たちは、大切なことを見極めてできるだけ要素を削ぎ落とし、結婚式を挙げるお二人が“本当に叶えたいこと”や“本当に伝えたいこと”を重視したプロデュースを目指しています。そして、心からよかったと感じていただける結婚式を実現したいと考えているんです。

──ウェディングプロデューサーになるまでの経緯を教えてください。

20代は、とにかく好奇心の赴くままにさまざまなチャレンジをしていました。新卒で大手のウェディング会社に就職し4年ほど働いたあと、趣味で熱中していたジャズピアノの影響から「20代のうちにアメリカで修行したい」と思い立ち、単身ニューヨークへ留学。その後はアメリカの現地留学会社でインターンとして働き、世界一周出張を経験したり、フリーランスのライターやPRとしても活動したりしました。

しかし、その後に入社した企業で、人間関係に悩まされてしまったんです。「ありがとう」や「お疲れさま」といった基本的なコミュニケーションがなかったり、フィードバックの内容に人格否定を感じてしまったり……。そんな空気に萎縮してか、次第に自分の考えや意見も伝えられなくなってしまって。その積み重ねで、いつしか「自分はダメな人間なんだ」と、自分の価値を感じられなくなり、精神的にかなりつらい時期を過ごしました。それで「このままではダメだ」と、なんとか一歩を踏み出して、その会社を離れました。

こういった経験を通して、安心できる“つながり”があってこそ、人はチャレンジできるものなのだと実感しました。

──その後、どうやってCRAZYと出合うことになったのでしょう?

それからどうするか考えるなかで、自分自身の過去を振り返ったときに、私が人同士の“つながり”を大切に思うもうひとつの原体験が思い浮かんだんです。

それは自身の置かれた家庭環境に関することでした。高校生のころ、両親が不仲になってしまって。しかし、父ががんで余命宣告をうけ、このままでは後悔すると思いニューヨークから帰国することに。するとその後、家族の関係性に変化が現れたんです。父と母がお互いに感謝の気持ちを表し、私自身も父と二人で飲みに行ったり、旅行をしたりと、それまで遠かった心の距離を縮めるように一緒の時間を過ごしました。

そのような経験から、身近な人だからこそ伝えられないことがあることや、それによってすれ違ってしまうこと、そして何かきっかけがあれば再び心をつなげることができるということを、身にしみて感じました。

そんな思いを抱いていたなかで、偶然Twitter(現X)でCRAZYの「私たちは、人々が愛し合うための、機会と勇気を提供し、パートナーシップの分断を解消します。」というパーパスを目にし、深く共感したんです。自分の人生で本当にやりたいことって、これだ、と。そして34歳でCRAZYに入ることになりました。

──転職活動は順調に進みましたか?

CRAZYの採用面談は「面談」というよりも「対話」という感じで、結構ユニークなんです。10人くらいとそれぞれ1時間ずつ対話を重ねていくスタイルで、おかげで自分を振り返る機会をたくさんもらいました。「自分はどんな人間なのか」「なぜCRAZYで働きたいのか」を、いろんな視点から言語化する体験ができたのは貴重な経験でした。

なかでも印象に残っているのが、最後に行われた代表の森山との面談で投げかけられた「自分のことを許せている?」という問いでした。この言葉が、結構グサっときて。

それまでの私は、自分のなかで「こうしたい」という思いがあっても、それが実現できていない自分が嫌で、そこから抜け出したくてなんとか現状を変えようとする……というように、どちらかというとネガティブな感情を原動力に人生を歩んできました。それはつまり、「ずっと自分のこと許せていなかった」んだと、初めて気づかされたんです。

その問いをきっかけに、自分の現在地を確認したというか……。ネガティブな感情がエネルギーであっても「パートナーシップの分断を解消したい」「人と人のつながりを大切にしたい」という想いが自分にとってゆるぎないものだと再認識できましたし、自分と同じような悩みを持つ人の力になりたいとも思いました。 私はこの仕事を通じて、どこか孤独を感じている人や、自分を肯定できない人たちに対して、「自分は愛されている」「安心できるつながりがある」と、気づいてもらいたいんです。人生の節目にこれまでを振り返り、大切な人たちと未来に向かって一歩を踏み出す結婚式という機会は、そのための大切なきっかけになると考えています。

愛を形にし、表現することの積み重ねが、世の中から孤独をなくす

──ずばり、吉川さんは今のお仕事を天職だと思っていますか?

はい、思っています。

私が考える天職とは、「自分が人生を通してやっていきたいと思える」且つ、「自分のポテンシャルや経験を存分に活かせる」仕事だと思っています。私にとってウェディングプロデューサーの仕事は、まさにそれに合致していると感じているんです。

──「自分が人生を通してやっていきたいと思える」ことについては先程もお話いただきましたが、「自分のポテンシャルや経験を存分に活かせる」というのは、吉川さんの場合はどんなことが言えるのでしょうか?

私は、幼少期からクラシックやジャズピアノをやってきた影響からか、「言葉で説明しきれないものを敏感に感じ取り、大切にしたい」という想いを持ち続けています。それが、今の仕事に合っていると思うんです。愛って、目に見えないものじゃないですか。その目に見えない部分をどう感じ取り、どう言葉にし、形にしていくかというのは、ウェディングプロデューサーが求められる技量のひとつでもあると思います。

それと人の話を聞いたり、それを自分なりに咀嚼して言葉で表現することが得意という点も、ヒアリングやプロデュースに活かすことができていると感じますね。

──具体的に、それらのポテンシャルを活かせたことを実感できたエピソードがあればぜひ聞かせてください。

ウェディングプロデューサーの仕事のひとつに、「ライフストーリー」という映像の制作があります。ライフストーリーはヒアリング内容をもとにお二人の生い立ちや出会い、大切にしている価値観などをそれぞれ短い言葉で表現しながら、物語調にまとめたものです。完成した映像は式当日に上映するほか、お二人には人生を通して実現したいことや伝えたいことを再確認するためのツールとしても活用いただきます。

ライフストーリーの提案は、何度やっても緊張します。お二人の人生を、私が言葉にさせてもらうわけですから。心掛けているのは、ドラマチックに描こうとするのではなく、等身大を表現すること。完成した映像をご覧いただいて、お二人に「お互いが大切にしていることを改めて認識できた」「過去の自分に背中を押された気持ちになった」などのお言葉をいただけると、心の底から「やった!」と喜びが込み上げてきます。

なかでも特に印象的に残っているのが、ある新郎のお母さまが、式の最後、ゲスト全体に向けてご挨拶をされたときに「あの映像を見て、私の子育ては間違っていなかったんだと感じました」とおっしゃったことです。その瞬間、お母さまの人生も祝福されたように感じて、そのきっかけをつくれたことを本当に嬉しく思いました。

──それはとても素晴らしいエピソードですね。吉川さんのお仕事を通して、ご家族の気持ちのつながりがさらに強くなる。まさに、やりたいことが実現できていますね。

家族って、実はすごく難しい存在なんですよね。近いからこそ、「ありがとう」や「ごめんね」が言いにくい。でも、結婚式という機会はその気持ちを伝える大きなチャンスだと考えています。その勇気を後押しする役割を担っているということに、誇りと責任を感じますね。

私は、このようなきっかけづくりを積み重ねることで、いつかは「世の中から孤独をなくしたい」と思っているんです。つながりがあることで人は安心できるし、自分のやりたいことにも挑戦できます。私自身、前職時代に自己否定に陥って、孤独を感じていた時期がありました。そのときは自分から人とのつながりを断ってしまって、本当に毎日がつらかったんです。だからこそ、人同士の心のつながりや愛情を、結婚式という機会を通じて形にすることで、結婚式を挙げるお二人にも、ご家族にも、ゲストの皆さんにも「自分は愛されているから大丈夫」と気づいてもらいたい。そして、その気持ちを糧に人生を前進させていく人を増やしていきたいと思っています。

──素敵な目標ですね。最後に、キャリアについて悩んでいる人や、天職に出合うための道を探っている人に向けて、アドバイスやメッセージをお願いします。

やりたいことを考えるとき、ポジティブな感情に目を向けなければと思ってしまうかもしれませんが、私自身もそうだったように、じつはマイナスの感情の裏にやりたいことが隠れていることが多いです。「これは嫌だ」という感情の裏には、「本当はこうしたい」という願いが隠れていますし、「この状況を打破したい」という気持ちは、ものすごく強いエネルギーになります。だから、勇気を出してネガティブな感情に向き合い、受け入れることで、自分が本当にやりたいことや大切にしたいことが見えてくるのでは、と思います。


「パートナーシップの分断を解消したい」「世の中から孤独をなくしたい」。

その願いを実現するために吉川さんは、結婚式という人生の節目で愛と想いを形にし、人々の心をつなぐお仕事をされています。

もともとは壁にぶつかった経験や、ネガティブな感情が原動力だったといいますが、その経験によって「人生を通して取り組みたい」と思える目標に出合い、ご自身の得意を活かしていきいきと働かれているのです。

吉川さんがおっしゃっていた「自分の価値に気づいてほしい」「愛されているんだと安心してほしい」という言葉。自分の価値や周囲からの愛に気づくことは、天職にたどり着くためにも大切なことなのではないでしょうか。

そして、吉川さんがお仕事に込める想いを聞いて、「吉川さんに結婚式をプロデュースしてもらった人たちは幸せだろうな」と、純粋に感じました。

これからも吉川さんのお仕事によって、愛や感謝の気持ちが次々と形になり、人々の心がつながっていく。目指す未来に向かって、責任を持ってお仕事に取り組まれる吉川さんを、これからも応援しています。

私の天職、見つけました。』シリーズでは、今後も自分の仕事に誇りを持って働く人たちの姿を紹介し、天職とは何かを探っていきたいと思います。次回もお楽しみに。

吉川梨沙さん

株式会社CRAZYIWAI OMOTESANDO チーフプロデューサー。

新卒で大手ウェディング会社に就職後、趣味で熱中していた音楽活動の影響でニューヨーク留学を経験。その後留学コンサル、フリーライター、広報PR、アート会社広報秘書を経験し、34歳で株式会社CRAZYに入社。ウェディングプロデューサーとして結婚式のプロデュースを行うほか、現在はチーフとしてマネジメント職も担当する。

https://x.com/risa_yoshikawa
https://www.instagram.com/crazy_wedding

ソラミドmadoについて

ソラミドmado

ソラミドmadoは、自然体な生き方を考えるメディア。「自然体で、生きよう。」をコンセプトに、さまざまな人の暮らし・考え方を発信しています。Twitterでも最新情報をお届け。みなさんと一緒に、自然体を考えられたら嬉しいです。https://twitter.com/soramido_media

取材

佐藤純平
ソラミド編集部

ああでもない、こうでもないと悩みがちなライター。ライフコーチとしても活動中。猫背を直したい。
Twitter: https://twitter.com/junpeissu

執筆

笹沼杏佳
ライター

大学在学中より雑誌制作やメディア運営、ブランドPRなどを手がける企業で勤務したのち、2017年からフリーランスとして活動。ウェブや雑誌、書籍、企業オウンドメディアなどでジャンルを問わず執筆。2020年からは株式会社スカイベイビーズにも所属。
https://www.sasanuma-kyoka.com/

撮影

飯塚麻美
フォトグラファー / ディレクター

東京と岩手を拠点にフリーランスで活動。1996年生まれ、神奈川県出身。旅・暮らし・人物撮影を得意分野とする。2022年よりスカイベイビーズに参加。ソラミドmado編集部では企画編集メンバー。
https://asamiiizuka.com/

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