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今年も一年ありがとうございました。編集部が選ぶ、2025年ソラミドmado推し記事

2025年も、ソラミドmadoの記事を読んでくださりありがとうございました。

今年は、私たち編集部にとって“つながり”をあらためて実感する一年でした。

取材を通して出会った方々、記事をきっかけに声をかけてくださった読者のみなさん、そして読後の感想や気づきを届けてくださる方々。そのひとつひとつが、私たちの背中をそっと押し、ソラミドmadoという場所を少しずつ育ててくれたように思います。

また今年は、新しい連載や読者のみなさんとの交流の機会も生まれ、自然体な生き方を探究する仲間が少しずつ広がっていくのを感じた一年でもありました。編集部も、取材や制作のなかで立ち止まったり、気づいたり、励まされたり……。みなさんと一緒に「自然体とは何か」を考え続けた日々でした。

さて今年もあっという間に過ぎて、2025年も残りわずか。

今回も編集部の5人で「今年心に残った記事」をひとつずつ選びました。どの記事も、作っているときの思い出やあれこれ考えた時間がぎゅっと詰まっていて、選ぶのは正直なかなか悩ましい作業でした。

どの記事も、編集部からの小さな手紙のようなもの。ゆっくり覗いていただき、みなさんの年末のちょっとした彩りになればうれしいです。

流れ着いたところで、「ある」ものと出会い、気づく

日々の生活の中で、不足感を抱くことが多々ある。仕事やお金、人間関係、自分の能力など、とにかく足りない。もっと得たい、もっと増やしたい。もっと良くしていきたい。そのために、多少無理をしてでも、がんばろうとしてしまう。上手くいくこともあれば、上手くいかないこともあって、疲れてしまい、ふと立ち止まる。「一体何のためにこんなに必死になっているんだっけ?」と。

今年、ぼくはそんな状態に陥った瞬間があった。何のためにがんばっているのか、頑張って何かを手にしたからといってどうなるのか、いつまでがんばっていればいいのか。そんな思考で頭がいっぱいになって、いろんなことが手につかなくなり、全てを投げ出したくなった。

そんなときに思い出したのが、「まちライブラリー」の提唱者である礒井純充さんを取材したときの記事だ。

「持つこと」はどこまでいっても終わりがありません。いまよりももっとを繰り返す。そして、以前の私のようにどこかで疲れてしまうわけです。そうではなくて、いかにあるがまま、いまここを生きられるか。つまり「あること」にフォーカスしようと。

ぼくは不足感にフォーカスしてしまっているのかもしれない、と読みながら気づいた。いまここにあるものに目を向けず、無視をしてしまっている。そんな気持ちになった。

川に浮かぶ落ち葉のように、流れるままに、あるがままに流れに身を任せていればいいんですよ。そして流れ着いたところが最善なんだと思い込むことが大切です。人は、生まれて成長して老いて、死ぬ。これ以上でもこれ以下でもなくて、その流れの中で、調子のいい時もあれば、調子の悪い時もある。

それでも、流れ着いたところが最善なんだと思い込んで生きていれば、新しい人や出来事との出会いがあるはずです。そのひとつひとつを大切にする。それが「あること」を重視した居場所の見つけ方だと思います。

ぼくはいま、どんなところに流れ着いているだろう。まだまだ力不足だけれど、ソラミドmadoで記事が書けている。裕福というわけではないけれど、生活はできている。少ないけれど、信頼できる友だちがいる。目を向けるところを変えてみると、たくさんの「ある」に囲まれていることに気づけ、満たされていくような感覚があった。

あるがままとは、おそらくいまここに「ある」ものをそのまま受け取るということなのかもしれない。そしてそれは、霊長類学者で総合地球環境学研究所の所長を務める山極壽一さんが言うように、心をつくることなのだ。

五感をフルに使って、何かに気づかなくちゃいけない。何かと出会い、身体が共鳴したときに得られる気づきこそが、心なんです。命は心をつくるためにあるんですよ。だから、孤独感を抱く人は、まず何かと出会ってもらえたらなと思います。

来年はどんな出会いがあり、どんな気づきがあるだろう。それがとても楽しみである。

佐藤 純平

1990年生まれ。大阪在住のライター。毎日noteを書き続けること1000日以上。日々の小さな出来事や考え事を記録し、自然体な自分とは何か? と向き合い続けている。

おとなになったら、自分の居場所は耕すもの

「友達って、どうやってつくるんだっけ……?」

2025年の夏まで過ごしたポルトガルで、私はそんな戸惑いの中にいました。 海外での生活は、居場所も、繋がりも、自分で見つけて自分のものにしていくしかないという厳しさがありました。そんな心細さを抱えていた私がチャレンジしてみたのは、「和太鼓道場に行ってみる」ことでした。

リスボンで和太鼓道場を主宰するかおりさん。この記事は、私にとって2025年で唯一ポルトガルで取材・撮影をすることができた思い入れの深い一本です。

実際に道場に飛び込んでみると、練習の合間に多国籍な仲間たちとわいわいご飯を食べに行ったり、イベントで太鼓を叩く機会をいただいたり。学生時代の部活や文化祭を思い出すような、純粋な楽しい時間を過ごすことができました。

仕事とは別の場所で、同じことに長く取り組める仲間がいるって素敵ですよね。私自身の生活は移動も多く、滞在中に道場に通えた回数は多くなかったのですが、いまも太鼓に熱中して全力な仲間たちはまさに青春を経験しているのだろうなと思います。

リスボンで和太鼓道場を主宰するかおりさん。この記事は、私にとって2025年で唯一ポルトガルで取材・撮影をすることができた思い入れの深い一本です。

実際に道場に飛び込んでみると、練習の合間に多国籍な仲間たちとわいわいご飯を食べに行ったり、イベントで太鼓を叩く機会をいただいたり。学生時代の部活や文化祭を思い出すような、純粋な楽しい時間を過ごすことができました。

仕事とは別の場所で、同じことに長く取り組める仲間がいるって素敵ですよね。私自身の生活は移動も多く、滞在中に道場に通えた回数は多くなかったのですが、いまも太鼓に熱中して全力な仲間たちはまさに青春を経験しているのだろうなと思います。

先生であるかおりさん自身も、和太鼓を通じて仲間を得て、お互いにとっての素敵な居場所をつくってこられました。

「習い事をはじめる」という一歩にこんなにも発見があり、人生を変えてしまう可能性があるなんて。わたしたちは、大人になっても楽しみながら自分の場所をつくることを練習していけばいいのかもしれません。2026年も、自分らしい居場所を耕していきたいと思います。

飯塚 麻美

1996年、神奈川県生まれ。フォトグラファーとして、東京と岩手の二拠点で活動。ソラミドmado編集部所属。ライフワークとして海や港で生きる人たちの写真を撮っている。

会社にいながら、自分らしく働くという選択

ソラミドmadoではこれまで、フリーランスや起業家など、「会社をやめて自由な働き方を選んだ人」への取材が多かったように思います。どうしても個人で活動している人のほうが、SNSや書籍などを通じてお名前を知る機会が多く、情報が集まりやすい。結果として、そうした方々の声を届ける場面が自然と増えていきました。

けれど同時に、ずっと心のどこかで、もどかしさも感じていました。

世の中の多くの人は、どこかの企業に勤めながら、日々の生活を営み、そのなかで「自分らしい働き方」や「納得できる仕事」を模索しているのではないか。万が一、会社を辞めることだけが自分らしさを実現する方法のように映ってしまうとしたら、それはソラミドmadoが本当に伝えたいこととは少し違う気がしていました。

そんななか、『ソラミドごはん』を通じたご縁から、パナソニック株式会社 くらしアプライアンス社の広田起子さんに取材させていただけることになりました。

現在は自動調理鍋『オートクッカービストロ』の調理プログラムやレシピ開発を担当する広田さん。もともとは「食」への純粋な興味からキャリアをスタートしながらも、長いあいだ食卓に直接関わる仕事とは異なる部署で働き、モヤモヤを抱えてきたといいます。

それでも、あきらめずに学び続け、行動を重ねた先に、10年越しで「こんな仕事がしたかった」と思える場所にたどり着いた。その姿から感じたのは、好きなことをすぐに仕事にできなくても、動き続けることの強さでした。

今になって振り返ってみると、「あれは全部、伏線だったんだな」と思えるんです。

今いる場所でできる小さな挑戦が、未来の伏線になることもある。広田さんの言葉が、そっと希望を手渡してくれたようでした。

これからもソラミドmadoでは、組織に所属しながら自分らしさを模索する人、会社にいながら納得のいく働き方を探している人にも寄り添える記事を届けていきたい。そのための取材や出会いを、これからも大切に重ねていきたいと思っています。

笹沼杏佳
ソラミドmado編集部

大学在学中より雑誌制作やメディア運営、ブランドPRなどを手がける企業で勤務したのち、2017年からフリーランスとして活動。ウェブや雑誌、書籍、企業オウンドメディアなどでジャンルを問わず執筆。2020年から株式会社スカイベイビーズ(ソラミドmadoの運営元)に所属。2023年には出産し一児の母に。お酒が好き。

誰かと歩む人生も、「自分で決めた」と胸を張れるように

大切な人と一緒に過ごしたり、結婚したりすると、自分の人生なのに、自分だけのものではなくなっていく感覚がある。結婚、妊娠、出産、育児、キャリア……。その一つひとつの選択に「自分の気持ちはちゃんと反映されているか」と問われると、言葉に詰まってしまう。

なぜ結婚したのか。なぜ苗字を変えたのか。どんな家族のかたちを築いていきたいか。どこでどんなふうに暮らしていきたいか。

本来なら、自分の気持ちにしっかり耳を傾けなければいけないはずなのに、「一般的にはこうだから」「パートナーがこう言ったから」と、相手や周囲の意見、世間一般のやり方に流されている自分がいる。

でも本当は、「これでいいのか?」と立ち止まって考えたいし、価値観の違いを恐れずにパートナーと話し合いたい。ともに生きているからこそ、お互いに素直な気持ちを語り合える関係でいたい。

そんなことを考えていたときに取材をさせてもらったのが、カップルや夫婦の対話を深めるためのカードゲーム「セキララカード」を生み出した藤原沙耶さんだ。

何もしないままで、ヘルシーな関係が築けるわけではありません。多くの人が健康になるために運動したり、食生活を見直したりしますよね。パートナーシップもそれと同じ。ヘルシーな関係を築きたいのであれば、話し合う、気持ちを伝えるといった“素直になるための努力”をし続ける必要があると思います。

「努力」という言葉を聞いて、気持ちを伝えることはそれだけ労力のいる行為なのだと腑に落ちた。だからこそ、うまく言葉にできずにモヤモヤしてしまうのも、自然なことなのだと受け止められた。同時に、怖さがあっても、気持ちを伝える経験を重ねていきたいと背中を押された。

記事には、藤原さんが自身のパートナーと「プロポーズ合戦」をしたエピソードも登場する。パートナーと素直な気持ちを伝え合うなかで、「男性からのプロポーズを待つ」ことへの違和感に気づき、藤原さん自身が行動を起こしたという話だ。

自分からプロポーズをすると、自分の人生に責任を持つ感覚が生まれて、心地よさを感じたんですよね。相手に言われたから、タイミングだから結婚するのではなくて、“私”がこの人と一緒に生きると決めたんだと実感できたんです。(中略)この先、何があっても誰かのせいにせず、責任を持って生きていけるという自信にもつながりました。

誰かと歩む人生。それは、まぎれもなく“私”の人生でもある。どんな道を選び、どんな結果になったとしても、「自分で決めたことだ」と納得できる状態でいたい。仕事、子育て、人間関係……日々、いろいろなことで悩み、立ち止まることもあるだろう。それでも、パートナーとの関係がヘルシーであれば、問題を乗り越えられたり、心の負担が軽くなったりするはずだ。

来年も、その先も。自分の心の声とパートナーの声に耳を傾け、素直な気持ちを伝え合う時間を大切にしていきたい。

上野彩希
ソラミドmado編集部

岡山出身。大学卒業後、SE、ホテルマンを経て、2021年からフリーランスのライターに。ジャンルは、パートナーシップ、生き方、働き方、子育てなど。趣味は、カフェ巡りと散歩。一児の母でもあり、現在働き方を模索中。

X:https://x.com/sakiueno1225

“なぜ生まれ持った身体を、嫌いにならなきゃいけないんだろう”

女の子は小顔で二重が「かわいい」、男の子は短髪で背が高いのが「かっこいい」───
そんな“誰かが決めた美しさの基準”と自分を比べて、疲れてしまうことはないだろうか。

お風呂上がりに鏡を見ながらため息をつく。


アルバイト代くらいの価格で二重手術ができると知り、気持ちが揺らぐ。
テレビに映るモデル体型を見て、無意識に「痩せなきゃ」と思ってしまう。
Instagramを眺めながら「あの子は可愛いけど、自分は……」と比べて落ち込む。

でもそれって、誰のため……?どうしてありのままの「私」と「あなた」じゃダメなの?

そんな問いからインタビューをさせてもらったのが、子育てをしながらルッキズムと向き合うライターのウィルソン麻菜さんです。

ウィルソンさんは、子育てをするなかで、自分自身にかけられていたルッキズムの呪いに気づいていったと言います。学生時代に悩まされてきた容姿へのコンプレックスを振り返りながら、「そもそも、なぜ自分の身体を嫌いにならなければならなかったのか」という問いに向き合う。その過程で、子どもたちへの接し方や、親としてどんな姿を見せたいのかを模索し続けながら、真摯に言葉を紡ぐ姿がとても印象的でした。

モヤっとしたときに「それ言われて嫌だった」と素直に言えて、「そっか。気づかなかったけど、そう感じる人もいるんだね」と受け止められる社会になったらいいなと思います。

私自身、子どものことを「ハーフってだけでチートだよね」と言われたとき、何も言い返せませんでした。でも、もし誰かがこの記事を読んで、「そういう言い方をされると嫌な人がいるんだな」と気づいてくれたら、それだけで言葉にした意味があると思うんです。

最近は日本でも、ドラマや映画、漫画などで、いろんな視点を描く物語が増えてきましたよね。そうした作品を通して“自分とはちがう誰かの感じ方”に触れ、「こういう人もいるんだな」と受け止められる人が増えていくといいなと思います。

だからこそ私も、親として、ライターとして、自分や誰かから見える世界を言葉にして伝え続けたいです。それがお互いの“ありのまま”を認めあう優しい世界につながると思うから。

ウィルソンさんのやさしいまなざしは、自分自身の心と身体に向き合うきっかけをくれました。私自身、子どもの頃から大人になった今も、見た目に対するコンプレックスが尽きることはありません。それでも、自然体で生きたいと願うとき、自分の心も身体も、まるごと受け入れられたらいい。堂々と「私の身体は、私のもの」と言える自分でありたい。そう思わせてくれる力強いインタビューでした。

貝津美里

生き方を伝えるライター・編集者
1996年生まれ。“人の生き方の選択肢を広げたい”という想いでライターになる。女性の生き方・働き方・ジェンダー・フェミニズムを中心に、企業のコンテンツ制作やメディア寄稿、本の執筆を手掛けています。埼玉県と新潟県糸魚川市の二拠点生活をしながら、海外にもよく行きます。柴犬好き。
プロフィール:https://lit.link/misatonoikikata

編集部のコメントを添えて並べてみると、今年も素敵な記事に囲まれていたなあ、としみじみ感じます。記事を通して出会った人や考えたこと、悩んだことの一つひとつが、“ソラミドmado”の今をつくっているのだと改めて実感しました。

これからも、読んでくださるみなさんと一緒に、歩んできた時間の積み重ねを感じられるメディアづくりを続けていきたいと思います。

来年は、それぞれの探究テーマをさらに深めながら、みなさんとの対話の時間も少しずつ生み出していけたらと思っています。読んだあとに心の風通しが少しよくなるような記事をお届けしながら、自然体な生き方を一緒に考えていきましょう。どうぞ、お楽しみに。

あたたかな新年をお迎えください。
2026年も、ソラミドmadoをどうぞよろしくお願いいたします。